H30_8【未来を創造していくのは いつの時代も「人」だ】
五輪は「ミライトワ」、パラリンピックは「ソメイティ」に決まりました。
ミライトワは「未来」と「永遠(とわ)」を結合させ
ソメイティは桜の「ソメイヨシノ」と英語の「so mighty(非常に力強い)」を掛け合わせたものだそうです。
私はこのマスコットの名前の持つ意味は、五輪は「子どもたちに永遠にある未来を」
そして「国(さくら)を背負って強く生きる」という姿勢を示しているのではないかと想像しています。
テーマに書いた言葉は日本有数の大衆イタリアンレストラン事業部の
正社員募集のご案内に書いてあった言葉です。
未来を創造していくのは、いつの時代も「人」だ。 そして言葉はさらに続きます。
「食堂業に『科学』という、かつてない概念を生み出し、可能性をきりひろげてきました。
その原動力となるのは、科学やテクノロジー単体ではなく、それらを駆使する「人」にこそある。
私たちはそう考えます。」と結んでいました。
改めて、『未来を創造していくのは、いつの時代も「人」だ。』
という言葉を考えてみた時、1991年に開催した
第26回ユネスコ総会において21世紀の教育や学習の在り方について検討するための
21世紀教育国際会議が設置されたことを思い出しました。
古い資料を紐解くとその成果を1996年「学習:秘められた宝」にまとめ
報告書も「ドロール・レポート」と呼ばれているものがありました。
表題の由来は、ラ・フォンテーヌの寓話「農夫とその子供たち」。
その内容は子どもたちが宝物を求めて畑を掘り起こす物語を「秘められた宝」として
農夫(親)が生涯教育を示し、子どもが生涯学習を見つめることを意味するとありました。
そして「学習の4本柱」が教育方針として提言されたのです。
1、知ることを学ぶ(learning to know)
2、為すことを学ぶ(learning to do)
3、共に生きることを学ぶ(learning to live together)
4、人間として生きることを学ぶ(learning to be)
ECEC(Early Childhood Education and Care 乳幼児期の教育とケア)は次のようにして生まれました。
乳幼児期プロジェクトのきっかけは1996年の「万人のための生涯学習の実現」
についての加盟国の教育大臣会議でした。
そして1998年3月「乳幼児期の教育とケア(ECEC)」政策に関する調査に着手しました。
調査をする正当な理由は、生涯学習の基礎を強化するということでした。
当初の考え方は、幼い子どもにケアと教育を提供することは、
女性の労働市場の参加を保証するうえで必要だと考えられていましたが、
次第にそれだけではなく乳幼児期の発達が人間の学習前発達の基礎形成段階であるとみなされるようになってきたからだというのです。
したがって乳幼児期のプログラムを作ることは、すべての子どもが人生を公平にスタートさせるのに役立ち、また教育を平等と社会的統合に寄与するであろうと考えたからでした。
そして2001年6月、OECD保育白書が
「人生の始まりこそ力強く:乳幼児期の教育とケア」
のタイトルで刊行されたのです。
OECDの基本的理念は次の通りです。(2項目のみ抜粋)
1、幼い子どもは年齢によらず人権の完全なる主体であり乳幼児期からの発達と教育への権利を有する。
2、近年の脳神経科学研究により、幼い子ども、特に3歳未満の人生の最初期にある 子どもは有能な学習者であることが確かとなった。
OECDの生涯学習・生涯教育の考え方は、人間の従前からの権利理解と新しい脳神経科学を取り入れた幼い子ども、特に3歳未満の子どもは有能な学習者である、という理念を持ったことでした。
私たち(社福)童心会の保育は、1973(昭和48)年
茨城県下館(現:筑西)市から始まった「0歳からの人間教育」でした。
「五感を刺激する教育・保育」Smart Learning(人間としての学ぶ姿勢)とは
五感を通しての
「学びのはじめ」
興味・関心・好奇心・意欲・意志
を育てることであると確信していたからです。
ようやくそれを脳神経科学やノーベル賞経済学賞を受賞したJ・J・ヘックマンや教育経済学者たちの30年、40年間に亘る縦断研究などが強い後押しをして、エビデンス(科学的根拠)を示してくれたことからまた私たちの教育・保育は進化を始められそうです。
改めて私たちのテーマはStarting strong(人生の始まりこそ力強く)ではなく、次のようになりました。
Starting Smart (人生の始まりこそスマートに)
・愛された育ち(子どもの権利)
・だきしめ言葉(養育者の義務)
そして人間教育の目標は次のようになりました。
人間を創る
ひ と り で できる ひ と り で できた ひ と り で 生きる
み ん な と できる み ん な と できた み ん な と 生きる
人のために できる 人のために できた 人のために 生きる
助けあって できる 助けあって できた 助けあって 生きる
以上
平成 30年 8月 吉日
社会福祉法人 童心会
理事長 中山 勲
H30_7【 家族であること ・ 共同生活者であること 】
私が今年4月から子どもたちや保育者仲間たちと生活している柏ECEC保育園では
(社福)童心会の伝統として受け継がれてきたしきたりがあります。
それは家でも保育園の中でも、そこに生活する人たちは皆が
「家族であり、共同生活者(児)である」という考え方です。
私たちの園では保育者仲間たちだけが”先生”ではありません。
子どもたちもお兄ちゃん先生、お姉ちゃん先生、それにお友だち先生にもなります。
そしてまたパパ先生、ママ先生もいます。
そして家に帰っても家族であると共に共同生活者(児)として見つめてもらうことにしています。
だから家では家族としての子どもとしてではなく、小さなお父さん、小さなお母さんとして活躍してくれることをお願いしております。
先の6月には課題学習にある「挨拶名人」にさくら組(5才児)さんから4人が表彰されました。
そして登り棒(2.5m)に登れたさくら組(5才児)からAさん、
たんぽぽ組(3才児)から BさんCさんの2名が表彰されました。
私が今日皆さまに一番お知らせしたいニュースは、
4月からの毎日の朝会の時からお話ししていたことなのですが
「お家では小さなお父さん、小さなお母さんになってママのお手伝いをしてくれるように」と
お願いしていたことを、もも組1才7ヶ月のD子さんが約束を守って表彰されたのです。
D子さんは賞状をお家に帰ってお父さんに見せびらかしながら
一日中賞状を大切に持っていたそうです。
改めて家族の人たちのご協力と仲間たちの励ましと保育者仲間たちの応援があって
”生きていく力”が身につくものであることがよく分かりました。
この表彰があってから多くのお母さんたちから
家の子もお手伝いをするようになりました、という声がたくさんありました。
また保育園では 0才児(ばら組さん)、1才児(もも組さん)たちは
歩けるようになると仲間たちのためにおやつを運んだり お手伝いをしてくれています。
また感動的なお話ですが、異年齢児交流保育の時にペア歩行中に小さい子がころんだ時、
先生より先にかけよって
「大丈夫、イタくなかった?」
と やさしく言葉かけをしてくれます。
たくさんの子どもたちが 先生やお兄ちゃん先生、お姉ちゃん先生のやさしさを身につけてくれています。
前にもお話したことがあるのですが、アフリカの諺(ことわざ)の中に
子どもを一人育てるためには、“一つの村” が必要なのです
という言葉を忘れることができません。
だから私がよく皆さまに問いかける言葉、
「保育所は今、何をする所ですか?」を一緒にふり返って考えていきたいと思いました。
保育所は今、生みの親の保護者の皆さまと、私たち保育者仲間が育ての親となって、
一緒に”(社福)童心会の村づくり”に励むところです。
そして次世代に生きる子どもたちに、責任をもってWell-being(幸せな人生)を送らせたいと思っています。
そのために私たち(社福)童心会の【保育者仲間の心得】を
皆さまにお伝えして 私たちの姿勢をご理解して頂けたらと思いました。
社会福祉法人 童心会
【保育者仲間の心得】
〇共同生活者に私たちの生き方を身をもってお伝えしていますか?
1)とびっきりの笑顔 5)ふれあうこと(ハイタッチ)
2)心をこめたご挨拶 6)認めあうこと
3)思いやりのあるひと言 7)伝えあうこと
4)いつも忘れない感謝の心 8)楽しみあうこと
以上
平成 30年 7月 吉日
社会福祉法人 童心会
理事長 中山 勲
H30_6【 再び ECEC(Early Childhood Education and Care) を考える 】
OECDは2001年に Starting Strong Ⅰ(人生の始まりこそ力強く)を発表した時、ECECを「乳幼児期の教育とケア」と解釈しています。
そして
Education and careとは”生涯学習と養育とケア”を一体化されることを意味している
と書いてありました。
日本ではこのような「人生100年の時代」に学校関係者の一部の人たちは小学校教育、中学校教育、高校教育を生涯教育として人間教育を捉えるべきであると進化した教育論を述べる人たちもいました。
そして今回の教育改革の重要なキーワードは
アクティブ・ラーニング(主体的、対話的で深い学び)
であるといっています。
また2018(平成30)年4月に改訂された「保育所保育指針」の中では第1に「子ども・子育て」を社会全体で支えること、第2に小学校以上の「学習指導要録」の改訂があり、5年10年後の予測できない社会を生きぬく子どもたちの大きな課題に対する教育の転換が必要とされていることが背景にあると書いていました。(玉川大学 大豆生田啓友教授が保育通信2018年1月号に掲載)
特に人生のスタートを支える保育の役割は重要であり「遊び が 学び」を行う専門性が問われ、また「養護」を基盤とした保育を行うことが求められているといっています。
だから保育はECECといわれ、教育とケアは一体的な営みだというのです。OECDが「Education and care」教育・保育を並列においたことでどちらが上であるとかの論議はなくなりました。その後、幼稚園関係者の話を聞くと、自分たちは「幼稚園教育」という領域の中で教育を進めていくといっていました。
最後に私たち(社福)童心会の人間教育観を示してまとめにかえたいと思います。
私は人間教育(生涯学習・生涯教育)を考えた時、人生は「生まれ、育ち、産み、育て、老い、死ぬ」という一連のプロセスを一巡するライフスタイルであると考えています。
まだ若い学問であると言われている「臨床教育学の生成」(皇紀夫 編著 玉川大学出版部) その中で執筆者たちは教育から人間形成へと歩む、相互形成の人間形成論を唱えています。
即ち人間教育学は人間形成論から臨床的人間形成論へと発展していくものかも知れないというのです。
だからOECDは、「幼い子どもは、年齢によらず人権の完全なる主体であり、国連子どもの権利条約が示すように、幼い子ども、皆、乳児期からの発達と教育への権利を有する」とありました。
また、「近年の脳神経科学研究により、子ども、特に3歳児未満の人生の最初期にある子どもは、有能な学習者であることが確かとなった」というのです。
こうした中にあって(社福)童心会の人間教育の理念を確認したいと思いました。
人間としての生きる基盤
〇愛された育ちの保障
愛されることは子どもの権利である
〇 抱 き し め 言 葉
養育者(親を含めて)の義務(務め)である。
最後に「愛されている」ことの言葉の意味を確認し、終りにしたいと思います。
「愛されている」
1、信頼されている 4、認められている
2、感謝されている 5、必要とされている
3、頼りにされている 6、大切にされている
平成 30年 6月 吉日
社会福祉法人 童心会
理事長 中山 勲