H28_09『星の王子様』サン=テグジュペリ作
皆さまご存知の「星の王子さま」の作者、サン=テグジュペリは、20世紀フランスの作家です。
名門貴族の子として生まれ、長じて航空会社のパイロットとして活躍する一方、多くの小説をものにします。
ところが、第二次世界大戦中の1944年7月、フランスの飛行中隊長としてコルシカ島の沖合を偵察している最中に、行方不明になってしまうのです。
フランス政府はこの功績を称えて、20フラン紙幣に名を残しました。
「星の王子さま」の中で心に残る名言は、友人になったキツネの言葉だと私は感じています。
私たち 社会福祉法人 童心会 の仲間たちは、今日まで五感を刺激する保育に取り組んできました。
即ち視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚から得た情報は、心を通して知識や知恵に変えるものだという考え方の上に立っています。
しかし、私たちの人間教育の中で一番大切にしているものは、「愛された育ちの保障」- だきしめ言葉 -なのです。
そして、信頼と愛情のホルモン 「オキシトシン」が双方に分泌され、つながりの中で活性化される人間関係を大切に育てているのです。
なぜなら、0才児からの五感から得た情報を知識や知恵にして、善行にするか、愚行・悪行に変えるかは、その人の意識(心)から生まれた人間性となって、人間の行動に現れるからです。
改めて今、家族や親子の人間関係を見つめてみると、次のような関係が生まれてきています。
1. 子どもを好きになれない
2. 子どもを可愛く思えない
3. 親に愛されたことがないから愛し方がわからない
4. 子どもの泣いている意味が分からない など。
このような時代の状況の中にあって、私たちはどのような人間教育を通して生き方を伝えていったらよいのでしょうか?
この物語は、あることがきっかけで自分の星を出てしまった、王子さまの体験記です。
小さな星の王子さまが生まれた星には、美しい一輪のバラの花が咲いていました。
王子さまは、その花の成長を見守って可愛がってあげましたが、ワガママで自分勝手な花が嫌になり故郷を出ていくのです。
故郷の星を離れた王子さまはいくつかの星を回りました。
最初に行った先は いばってばかりいる「王様の星」。
二番目は「うぬぼれ男の星」、三番目はお酒ばかり飲んでいる「呑み助の星」・・・。
そして王子さまが7番目に訪れたのが地球でした。
この地球という星には、自分の国にはたったひとつの美しい宝物「バラの花」が、五千ほどありました。
そして自分の国の貧しさを嘆くのです。
泣いている王子さまの前にキツネが現れ、いつしか本当の仲良しになり、そしてかけがえのないお友だちになりました。
しかしだんだんお別れの時間が近づいてきます。
別れる前、キツネは王子さまにもう一度バラ園に行くことを促します。
そして地球にある、美しいけれどただ咲いているだけの花と、故郷にいる手塩に掛けた大切な一輪の花が、自分にとってどれだけ大切なものだったのかを知るのでした。
約束通りバラ園に行って、戻った王子さまにキツネは言うのです。
「なに・・・。なんでもないことだよ。
心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。
かんじんなことは、目に見えないんだよ。」
平成 28 年 9月 吉日
社会福祉法人 童心会
理事長 中山 勲