思いやりと生きる力

わたしを ぎゅっとして わたしを 見つめて わたしを 聞いて わたしを 呼んで

H29_12【新しい保育技法 スマートラーニングの創意に学ぶ】

ある所で私は、

「(社福)童心会では 0~1歳児から運動会やX’mas生活発表会に参加してますよ!」 と話をしたら驚かれました。

この話を聞いた人たちは、

「0~1歳児が運動会で何をするのですか?」

「 0~1歳児がX’mas生活発表会で何をするのですか?」

とたて続けに聞いてくるのです。

 

私は皆さんに丁寧に次のように応えました。

 

ひとの成り立ちを考えた時、人間は胎生期28週頃から視覚・聴覚・体性感覚などの基本的なネットワークが作られているのだから、そこから「人間教育」を見つめなければいけないのではないか、と伝えながら認知神経科学脳科学の二つのエビデンス(科学的根拠)をお話しました。

 

一つ目は自尊感情のことです。

自己肯定感ではなく 基本的自尊感情の基盤は、この世に生まれて、最初に出会う養育者(多くは母親)との信頼関係から生まれます。

また今この時代、保育園は村でもあり 家庭でもあります。

だからそこに生活する者(保育者、子どもたち、保護者、育ての親、地域の人たち)は家族として共に暮らしながら 生きている喜びを味わい、社会的自尊感情と基本的自尊感情を “一体”として 高めていかなければなりません。

即ち 運動会やX’mas生活発表会など家庭生活、保育園での生活や行事をくり返しながら五感を刺激し、成功体験、失敗体験、喜怒哀楽など体験の共有、感情の共有を繰り返していくことが人間にとって大切な「生きる力、乗りこえる力」を育てるために必要なことなのです。

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また私たちが目指すものは、子どもたち(乳幼児)の現在(いま)を最も良く生き、望ましい未来を作り出す力の基礎を培うために何をすべきか、が問われています。

改めて人間としての生きる基盤を考えた時、先に述べた基本的自尊感情「愛された育ち・抱きしめ言葉」につつまれながら、授けられた五感を刺激し続けなければなりません。

だから二つ目はニューロン神経細胞)とシナプス(神経回路)との関係になります。

私たちの知覚から認知運動に至るまで、あらゆる情報はニューロンという神経細胞が刺激されることによってシナプスが出来、そこにまたニューロンがつながり神経伝達物質がでて、次のシナプスに情報がつながるというのです。

だから最近の認知神経科学脳科学の世界では、外環境・自然環境などを活用しながらたくさんの刺激を与えることでシナプスの数を増やすことが重要であり、

0~3,4歳までがピークになります。

一方で、シナプスができなかった神経細胞は不要とされ死んでいきます。

(これを “刈り込み現象” といいます。)

だから私たち(社福)童心会の保育は、次のようになっています。

視覚   観(見)て  学び     嗅覚   においを 嗅いで

聴覚   聴(聞)いて 習い  味覚   味を  味わう   

触覚   触れて 感じ     (五味、五色、五感)

そして  すべてを意識(心)で受けとめながら(体験の共有、感情の共有)意欲、意志、智慧を高めることになります。

私たちはこのような「0歳からの人間教育」を昭和48年(1973年)から始めてきました。

1990年頃から認知神経科学の台頭があり、特に1995年 京都大学のfMRI(機能的MRI)の導入は私たちの行っている 人間教育にエビデンスを与えてくれました。

そして2000年には 視覚・聴覚のミラーニューロン(身体化による認知・模倣)も発見されました。

しかし未だにこのような「人間科学を取り入れた人間教育」には至っておりません。

だから私は「アクティブラーニング」ではなく、

ECEC(Early Childhood Education and Care)早期乳幼児の教育・保育には、スマートラーニング(賢い学び方)が必要であり、それは 「内なる感動から生まれる学びの姿勢」 であります。

だから今、私たちに与えられている役割は、0歳からの人間教育、非認知能力を高めていくことがこの社会に求められているのではないか、と強く思っているのです。

                         

参考文献 : 『脳科学から見る子どもの心の育ち』 乾 敏郎 著  ミネルヴァ書房

       『乳幼児期から育む自尊感情 』 近藤 卓 著  エイデル研究所

 

平成 29 年 12月 吉日

社会福祉法人 童心会

理事長  中山 勲