H30_11【(社福)童心会 保育の特色~外環境・四季環境の活用~】
私が茨城県で筑子保育園を運営していた時代から師と仰ぐ藤田先生という人がいます。
出会いは先生が、茨城県の校長会の副会長、下館小学校の校長を退職してから
教育委員会の指導主事になられて、保育園の指導に来られてからでした。
最初に交わした言葉が、「園庭が少し狭いようですね」と言われ、私は次のように答えました。
保育園から50m歩くと田んぼも畑も、ザリガニのたくさん取れる用水路もあぜ道もあります。
100m歩くと勤行川という秋にはさけが遡上する川もあり、その畔には図書館、市役所があります。
夏には川下りをしたり、毎月マイライブラリーとして遊びに行ったりしています。
500m位離れた所にはJR下館駅や大きな商店街が連なっており、
これ全部が保育園の庭です。と言った時から先生との出会いが始まりました。
もう23年以上前になるのでしょうか?
そして先生が再度来園した時に、2~3歳の子どもたちが補助なし自転車にチャレンジし、転んでも泣かないで練習している姿や、卒園式に3歳児が1時間位静かに参席している姿などを見ているうちに、
私たちの「0歳からの人間教育、五感を刺激する保育」に共感して下さるようになり今日に至っております。
今年(H30年4月) 力公(ちから)先生が (社福)童心会に入職してから今まで以上にバス2台を利用した外環境・四季環境を活用した教育・保育を展開しています。
そうした活動の中で、私たちの保育の世界を科学すると
2001年のOECDのECEC(Early Childfood Education and Care) の発表では、
3歳未満の子どもたちは 有能な学習者であると言っています。
また脳神経科学の世界では 次のように言われています。
生れた時の赤ちゃんの大脳皮質には、神経細胞(ニューロン)の数が大人と同じくらいあるのですが、情報は脳の刺激を受けてはじめて神経細胞につながり、それらが神経回路となりシナプス(神経伝達物質)が出来、ネットワークが生まれます。
そして そのシナプスは 3~4才頃までがピークになるので、「0歳からの人間教育 五感を刺激する教育・保育」を大切にしなければならないと言っているのです。
そして(社福)童心会の特色ある保育は、外環境・四季環境を活用することが重要であるという考え方であり、少なくとも0~3、4歳まではすべての脳の分野を鍛えるために、刺激を与えることが必要だと確信し、実践しています。
だから、ちから先生の役割と先生方が行っているお散歩などの屋外活動・異年齢児交流保育なども教育・保育の場として重視しなければいけないのです。
前にご紹介したことがあると思いますが、「乳幼児期から育む自尊感情」生きる力、乗りこえる力 というご本(近藤卓著)の中で次のようなことが書いてあります。
「人間に、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚など五感に代表される感覚器官はあるが、
喜怒哀楽以外にも様々な感情を持つのに専用の感情の器官を持っていない」
というのです。それは「心はどこにありますか」「心はどうして育つのですか」
という問いかけでもありました。
著者は基本的自尊感情は共有体験によって育まれると言い、感情は、他者がいるからこそ生まれる。
つまり感情を司る心は、その人の中にあるのではなく 人と人との間にあるともいえるのだというのです。
つまり共有体験とは、信頼できる他者と五感を通じた体験を共にし、その時その場で共に感じあうこと。即ち「体験の共有」と「感情の共有」のことを言うのだそうです。
これが正に(社福)童心会の保育なのです。
改めて私たち(社福)童心会の保育を見つめた時、保育園の中だけの生活を中心とするのでなく、社会環境、養育環境、人環境、外環境、四季環境を活用しながら、次世代から未来につながる人間を創る役割をもたされている気がしてなりません。
私は今、教育・保育の世界を前にして 生活・運動・心・体・脳の発達をくり返しながら
これからの人生100年時代に生きる人間に必要なものは何かを考えた時”思いやり と 生きる力”を真っ先に思い浮かべました。
「利他の心、他者理解」即ち”他者の心情を察する能力”とでも言いましょうか!
正にそれは外環境・四季環境などを活用した 「体験の共有」「感情の共有」から生まれてくるものでありますから、(社福)童心会の保育を大切にしたいと改めて強く思いました。
平成 30年 11月 吉日
社会福祉法人 童心会
理事長 中山 勲