〔愛され上手〕~五感を刺激する 0歳からの人間教育~
ある私たちの情報誌の中で 汐見稔幸東京大学名誉教授は「平成の保育を語る」の中で、平成の30年はウェルフェア(wel fare=福祉)からウェルビーイング(well being=心身共に、そして社会的に幸せな生活)になったというのです。
昭和の福祉から新しい福祉へと広がった時期といえるのではないか、即ち新しい福祉ニーズを社会全体でサポートするという時代になった、というのです。
それは地緑、血縁で支えあってきた社会の大家族がなくなり、生活の中で手作業がなくなり、子育てなど もっとも共同しなくてはいけない営みがうまくいかなくなったからだというのです。
私はこうした時代が 茨城県の人口6万有余の下館市(現:筑西市)にも押し寄せ、田舎でも核家族化が起こり始めた頃、1973年(昭和48年)に筑子保育園の園長として保育の世界に入りました。
それ以前に、白山学園という知的障害児の施設に勤務していた時には、家庭訪問で障害の重い人ほど五感の刺激を受けなかった人たちが多数いたことを知った時に、「五感を刺激する 0歳からの人間教育の大切さ」を直感的に感じました。
それが今も続いている 私の人間教育の原点になっているのです。
過日、牛久みらい保育園で8月の理事長研修会を開きました。
テーマは
「現代社会の問題と保育(1 on 1の意味)」~メンタルヘルス・ケアは誰のために~
でした。
この研修後の感想文には、(社福)童心会の保育実践学の基盤になっている
保育理論が明示されていました。
「愛され上手」
理事長先生より「人間は胎生期より愛されるために感覚や運動機能を身につけ始める」ことを学びました。
牛久みらい保育園の子どもたちは「愛される能力」に長けていると、日々の生活の中で実感することが多々あります。
目が合うとほほえみかけてくれる、気づくと側にいてそっと手をつないでくる、 朝の会や帰りの会の「わたしをぎゅっとして」の時間には本当に嬉しそうな顔で全力で抱きしめてくれる、というノンバーバルなシグナルのほか、
「ありがとう」 「うれしい」 「だいすき」 等のポジティブな言葉の表出が上手であると感じます。
愛されずにはいられない子ども達の姿は、童心会の保育によって、保育者に受け止められ愛されているからこそ作られるものだと思っています。
それは、まるで幸せな胎生期のような安心感がある ということだと私は思います。
この幸せな応答行為(アタッチメント)を守り発展させられるよう、日々精進してまいります。
〔キーワード〕
・ほめ上手 ・聞き上手 ・だい好き上手
・ほほえみ上手 ・まなざし上手 ・よろこび上手
・アイサツ上手 ・手伝い上手 ・だきしめ上手
・アリガト上手(お礼)・ふれあい上手 ・よりそい上手
・あまえ上手 ・仕草上手
今この時代をふり返ってみた時 1996年頃からOECD(経済協力開発機構)と
UNESCO(国連教育科学文化機関)は、世界の生涯学習・生涯教育「万人のための生涯学習の実現」の政策に関するテーマ調査に着手しました。
即ち、近年の脳神経科学研究により、幼い子ども、特に3歳児未満の人生最初期にある子どもは、有能な学習者であることが確かとなったからだというのです。
(社福)童心会の前身、筑子保育園(1973年)からの「乳幼児期からの教育とケア」 ECEC(Early Childhood Education and Care)
「五感を刺激する 0歳からの人間教育」は私の人間教育に対する仮説から始まりましたが、未だに色あせていないことを確信し、イノベーションのエビデンス(科学的根拠)が実証してくたことを誇りに思っています。
これからも、「新しい人間教育術の構築」~Innovation of Human Education and Care~を(社福)童心会は目指していくつもりです。
皆さまのご協力を よろしくお願いいたします。
令和元年 9月吉日
社会福祉法人 童心会
理事長 中山 勲