思いやりと生きる力

わたしを ぎゅっとして わたしを 見つめて わたしを 聞いて わたしを 呼んで

〔 アフターコロナに備えて 〕 ~愛された育ち と 抱きしめ言葉~

 今 私たちに関係する人間科学の世界で、比較認知発達科学というアプローチから「人の心が生れる道すじ~四つの基本的事実~」が発表されています。

(1)胎児期から新生児期にかけて、ヒトの身体や行動、心のはたらき、知覚、認知機能は連続的に発達する。


(2)生後 1 年半にわたるヒトの心のはたらきの発達過程を見ると生後二ヶ月と生後九ヶ月目が二度の飛躍期である。特に九ヶ月目はヒトの心のはたらきが顕著に発達してくる。


(3)ヒトらしい心を発達させるのは、他者からの積極的な関わりを特徴とするヒト特有の養育環境である。


(4) ヒトらしい心を育くむ環境は、ヒト特有の心のはたらきによって成立している。ヒトは自分の心だけでなく次の世代のヒトの心の発達を支える「環境」としての役割も果たすよう、進化してきた動物である。

(「ヒトの発達の謎を解く」明和政子・ちくま新書(2019年)

 

 

 ヒトは胎児の頃から学習する存在であると言われています。
 特に新生児を対象に3 種類の感覚・視覚・聴覚・触覚の刺激を受けたときに生じる脳活動の中で、特に重要な発見は、触覚刺激に対する脳活動だったそうです。

 


 つまり、ヒトらしい心の発達の連続性とは私たち(社福)童心会のいう”愛された育ち と だきしめ言葉 ”のことなのです。


 自分の身体と他の個体、養育者との身体と連続的につないでいくことが必要でそれがとても大切な「人の心が生れる道すじ」だと言っているのです。

 

 だから私たちはコロナ渦で 自粛登園、家庭保育が求められた時に(社福)童心会全園で家庭、保育園、社会が” つながる運動 ”をリモートで展開してきました。


 しかし今はアフターコロナの対応が叫ばれている時代です。
 私たちの保育の世界での子どもたちや 保護者の方たちのおかれている現状をみてみますと、両親のおかれた生活環境、会社の倒産や雇用の打ち切りなどの経済的な問題は、すぐに子どもたちの養育環境に影響を与えます。
 経済の再生も以前のように戻るには3 ~4 年くらいかかるだろうと言われています。
 だから私たちはそのような時代に現れる家庭での養育環境を予測して、次のような対策を考えて見ました。


 私たち(社福)童心会には、人間科学を通して見つめた人間教育「養育・学習・ CARE (療育)」という考え方から生れた二つの Care mind (道しるべ) があります。

 

 1つ目は子どもの権利として認められている 「愛された育ち」 です。
養育=生命の保持=愛された育ち(タッチ・ケア)=子どもの権利=身体接触=応答関係=愛着形成

 生命の保持とは、身体と身体がふれあい、心と心が寄りそいあって大切にしたい、という魂がゆさぶられるような応答関係 を繰り返しながら愛着が生れる関係をいいます。

 

 2つ目は「養育者の義務」として当然果たさなければならない「だきしめ言葉」です。
養育=情緒の安定=だきしめ言葉(カンガルー・ケア)=養育者の義務=情愛的接触=応答関係=愛着形成

 

 情緒の安定とは、思いやりのある深い愛情、情愛を持ったふれあいを通して強い感動を与えられる生活を繰り返しながら深い愛着を形成することを言います。
 私たちはこうした目に見えない新型コロナウィルスと対峙した時、人間の無力(むりき)さを感じました。


こんな時だからこそ

ひとりで  生きる

人のために 生きる

みんなと  生きる

助けあって 生きる


 (社福)童心会の訓を守り続けなければいけません。
 そして私たちはこうした大きな2 つの Care Mind (道しるべ)を通して(社福)童心会の保育園一つひとつが村となって共同養育(アロマザリング)を始めなければなりません。
 今こそ”愛された子どもは強く生きられる”という言葉を信じて「愛された育ち(ふれあいと見まもり)、だきしめ言葉」の意味を噛みしめながら、未来に生きる子ども達のために歩み続けて行きませんか?


令和2年9 月 吉日
社会福祉法人 童心会
理事長 中山 勲