思いやりと生きる力

わたしを ぎゅっとして わたしを 見つめて わたしを 聞いて わたしを 呼んで

〔 今コロナ禍の意味を考える 〕 ~人類に与えられたパンデミックの歴史をふり返る

 今年もはやすでに暦の上では2月、如月(きさらぎ)になりました。
寒さが厳しさを増すなかで、ほんおり春の気配を感じさせてくれる季節です。

 如月の二十四節気、七十二候の中には、2月2 日お稲荷様と初午、2月3日季節の分かれ目、節分、2月4日立春大吉、2月5日春告草(梅の花)、2月7日春一番、2月8日針供養、2月9日雨水などの昔から伝えられてきた仕来りがあります。

 いつものような月日の移ろいなら、穏やかな仕来りが以前からのならわしの如く引き継がれ、節分や立春、春告草を迎える手はずを準備しているはずでした。
 しかし2019年から始まったcovid19(新型コロナウィルス)の感染者の数は留まるところを知りません。

 私たちはこのような困難に陥った時には、過去の歴史に学ばなければなりませんが、
人類に与えられた健康問題のパンデミックの試練は次のようになっています。

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 イスラエル歴史学者で「サピエンス全史」などの著者:ユヴェル・ノア・ハラ リ 氏は、新型コロナウィルスによる健康危機が引き起こしかねない帰結を分析し、各国間の科学的な協力と情報交換の拡大の 重要性を指摘していました。

 

Q: 今回の健康問題のパンデミック(世界的流行)は過去の健康危機とどう異なり、
それは何を意味するのでしょうか?

A: 私たちが直面しているのが世界的健康脅威として最悪か否かは定かでない。
1918~1919 年のインフルエンザの伝染の方が悪質だったし、エイズの伝染もおそらく、より悪質で、全時代のパンデミックのほうが、悪質だったのは確かだ。
 ただし、新型コロナウィルスは医療危機だけではない。深刻な経済的、政治的危機ももたらす。私が恐れるのはむしろウィルス自体より憎しみ、貪欲、無知といった人類の悪魔のほうだ。 (PRESIDENT2020.10.16 号 /UNESCO Courier のインタビュー /P20)
 

 このウィルスは私たちが人間として持つ最善の本能を利用して広がる。私たち社会的動物なのだ。
 特に困難な時期には私たちは接触を求める。親戚、友人、隣人が病気になれば、私たちには慈悲の精神が生じ、助けに行きたいと思う。このウィルスはそうした私たちの行動を利用して伝染する。
(中略)
 この危機が終われば、基本的な人間の本能に対する長期的な影響はない。
 私たちは社会的動物であり続け、接触を好み続けるだろう。友人や親戚を助けに行き続けるだろう。
 次に世界的な賢者ジャック・アタリ氏(1981 年フランスミッテラン大統領顧問などの要職を歴任)は次のように語っていました。(PRESIDENT/2021.1.1 号 /P58)

 

 「今回のコロナ危機が発生してから私の怒りの一つ目の理由は、多くの人々が
パンデミックという悪夢が終われば、危機が発生する以前の世界に戻ることができると考えているからだ。
 だが、ワクチンや治療薬が開発され、パンデミックが収束したとしても、社会を元通りに戻すことは絶対にやってはいけない。以前の社会こそがこの危機を生み出した」と看破しています。

 

 『怒りの三つめの理由は、多くの為政者が国民の健康維持は国にとって負担ではなく財産なのだ、と理解してこなかったことだ。国民の命を大切にしないことに対する、この怒りは「命の経済」というコンセプトにつながる』 と言っています。

 

ジャック・アタリ氏の言う「命の経済」につながるコンセプトは次のようになります。

1 まずは健康を守る部 門 。医療産業全般(病院・医師・看護師 他
2 健全な農業、水、食料、食品売り場の安全
3 教育部 門 、教育、職業訓練、 転職 支援のための 研修。
4 デジタル化に関する部 門 、 研究者 、再生可能エネルギー関係。
5 治安維持、報道の自由(情報開示)、ジャーナリズム
6 芸術、文化、保険、金融 etc.

 

 今、即時の成果、不安定な生活、利己主義が世の中の規範になった現在、われわれは未来に備え、利他主義の精神に準じて将来世代に資する「ポジティブな社会」と「闘う民主主義」が両輪となる社会を再構築していけば、われわれは明るい未来を築くことができるはずだ、とまとめていました。

 

 今TV では世界で covid 19 の感染者が 95 543 548 人( 2020.1.19 現在)になったと報じています。
 このコロナ禍の中にあっても、この世界の一隅に多くの人たちと共にひっそりと暮らす私には「冬来たりなば春遠からじ」の言葉が如月の春風につつまれて届けられてきました。
 いよいよ春本番、この私をますます萌え出ずる弥生(やよい)の世界に誘(いざな)うかのようです。
 令和3年2月吉日
 社会福祉法人 童心会
 理事長 中山 勲