思いやりと生きる力

わたしを ぎゅっとして わたしを 見つめて わたしを 聞いて わたしを 呼んで

H30_02 【愛されること 愛すること】(承認と応答)

貧困、いじめ、勇気、学問・・・。

今も昔も変わらないテーマに人間としてどう向き合うべきか。

今流行りの「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎、マガジンハウス)を読みました。

この本は今でこそ流行にのった大ベストセラーなのですが、実は1937(昭和12)年7月に発行されたものなのです。

有名なジャーナリストで名城大学教授の池上彰さんは、本書の巻頭言の中で『君たちはどう生きるか』を読む前に、“私たちはどう生きるか” と問いかけています。

これを読んで私は(社福)童心会の「人間教育の理念」を再確認しました。

『私たちは、子どもたちが現在(いま)を最も良く生き、望ましい未来を作り出す力の基礎を培うために時代の変化に対応した保育を創造し実践して行かなければなりません。

そして子どもたち一人ひとりが、人格を持った人間としてお互いが認められ、“生まれてから死を迎えられるまでの一生”を人間教育の場として捉え、「人間として如何に生きるべきか」 を学ぶための原体験を創ることが、人間教育(保育)の理念であります』と書きました。

改めて “私たちはどういきるか” を問われた時、心のめばえは「愛されること、愛する事」から始まるというエビデンスもあり、私もこれを信じています。

即ち子どもたちの心と身体は “人間性豊かなより多くの人たち”との毎日の生活の中で「ふれあいと見守り、抱きしめ言葉」を通して「思いやり と 生きる力」が育てられます。

そして これが 人間教育の原体験 になるのです。

 

f:id:doushinkai:20180315175447j:plain

子どもの感覚や感情や欲求を育んでいくためには、「愛情」が より正確にいえば 「承認と応答の関係」が必要なのではないでしょうか?

児童精神医学者の滝川一廣(ルソー エミール  西研NHK出版)さんによれば、不快で泣いていた赤ちゃんは、養育者が「おなかが空いたのね、おっぱいあげる」、「おむつが冷たいのね、取り替えてあげるね」というふうに適切に対応してあげると、「空腹の不快」「冷たさの不快」とが分化してくるというのです。

つまりお腹が空いたときと、おむつが冷たいときでは泣き声に違いが生じてくるので、それがわかるのだそうです。

だから 「泣いたら哺乳瓶を口に突っ込まれる」 というような養育を続けられていると、感覚が育たないばかりか “心が病む” と言われています。

つまりこれは、子どもの感覚、感情や欲求は養育者の持つ愛情、「承認と応答関係」の中で育つということになるのです。

だから 「どうしたの、悲しいの?」 「怒ったの?」 「お腹空いたの?」といったノンバーバル・コミュニケーションの大切さを感じとることを、私たちは 社会福祉法人 童心会の保育者仲間  の大切な心得としています。

改めてヒトが求めている愛情・愛とは 自分が持つ感覚・感情・欲求から生まれる心の働きやその気持ちに対して いつも安らかで、落ち着いていて、穏やかな 「承認と応答」即ち、傾聴、共感、受容が常に構築されている関係をいうのであると 確信しています。

改めて  「君たちはどう生きるか」 と問われたら、

また 「私たちはどう生きるか」 と問われたら

私はすかさず次のように答えられるヒトになりたいと思っています。

「わたしは 愛された喜びを いまも忘れたことはありません。

  わたしは 愛する喜びを いつも忘れません。

  だから わたしは 生かされている喜びに 感謝しています。」

保護者の皆さん、如何でしょうか?

この問いかけは 私たち人間に対する 永遠の追及課題ではないでしょうか。

私たち(社福)童心会はこの信条を求めながら、これからも毎日がんばっていくつもりです。

どうぞよろしくご指導、ご支援下さるよう お願い申し上げます。

                  

平成 30年 2月 吉日

社会福祉法人 童心会

理事長  中山 勲

H30_01 【年頭初感 新しい人間教育・保育の創造】

― ヒトの成り立ち ―

(スターティング・カリキュラム)

また新しい年を迎えさせていただきました。

なぜか数えきれないほどの「新たな年」を迎えさせていただき、子どもたちと共に生きる幸せを身に染みて感じております。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

f:id:doushinkai:20180316215509j:plain

さて「人類進化700万年の物語」の著者 チップ・ウォルターは、現在まで28種類の人族の骨が発見されたが、今日まで生きのびて来られたのは、ホモサピエンスだけで、他の丈夫で力強い系統の人族はすべて絶滅してしまったというのです。

また、生まれてすぐ立ち上がる動物などに比べて未成熟な状態で生まれてくるホモサピエンスは、親や養育者や地域の人たちが、養育や学びに時間と手間をかけて身近な自然、身近な事象、多様な環境に適応できる智慧の獲得につながったのだろう、と書いていました。

先にOECDは、スターティング・ストロング(人生の始まりこそ 力強く)と題する報告書をまとめ発表しました。 

そこには「人的資本への投資は幼児期に始め、早期に力強く一歩を踏み出すことだ」 と書いてあります。

「幼児教育・保育の恩恵をもたらすものはその質  如何である」 とも書いてありました。

私はもし ECEC 「早期乳幼児の教育・保育」 の重要性が問われているのなら、スターティング・カリキュラム(人生の始まりの教育・保育計画)こそが大切であると思うのです。

平成27年7月に発足した、東京大学、発達保育実践政策学センターも、「あらゆる学問は保育につながる」また「子育ては学問にとって最高難度のテーマである」と声高に謳っていました。

今や子育てや教育・保育は質の向上だけではなく、その本質や命題を下記図表のように

視覚化しなければならないと確信し 作ってみました。

 

- ヒトの成り立ち -

f:id:doushinkai:20180316165518p:plain

                          

                         

改めて「ヒトの成り立ち」を考えた時、ヒトの心と体の育ちは 愛された育ち(だきしめ言葉)を通して、人々の慈愛を豊かに身につけながら、かかわり、気づき、共生(ともいき)を通して、お互いを活かし合って育ち合います。

そしてまた 他者との協同をくり返しながら、而今(いまなすべき いまの心)を積み重ね、つながりのある暮らし、環境などを通して、助け合って生活しながら お互いの心身の健やかな育ちを念ずることであります。

ひとはそれを今流行りの「非認知的スキル(心の力)」と呼んでいます。

私たちは「内なる感動から生まれる学びの姿勢・生きる姿勢」と言っています。

それは、興味・関心・好奇心・意欲・意志(五感を刺激する保育)から始まります。

これが 社会福祉法人 童心会 の保育です。

                        

平成 30年 1月 吉日

社会福祉法人 童心会

理事長  中山 勲

H29_12【新しい保育技法 スマートラーニングの創意に学ぶ】

ある所で私は、

「(社福)童心会では 0~1歳児から運動会やX’mas生活発表会に参加してますよ!」 と話をしたら驚かれました。

この話を聞いた人たちは、

「0~1歳児が運動会で何をするのですか?」

「 0~1歳児がX’mas生活発表会で何をするのですか?」

とたて続けに聞いてくるのです。

 

私は皆さんに丁寧に次のように応えました。

 

ひとの成り立ちを考えた時、人間は胎生期28週頃から視覚・聴覚・体性感覚などの基本的なネットワークが作られているのだから、そこから「人間教育」を見つめなければいけないのではないか、と伝えながら認知神経科学脳科学の二つのエビデンス(科学的根拠)をお話しました。

 

一つ目は自尊感情のことです。

自己肯定感ではなく 基本的自尊感情の基盤は、この世に生まれて、最初に出会う養育者(多くは母親)との信頼関係から生まれます。

また今この時代、保育園は村でもあり 家庭でもあります。

だからそこに生活する者(保育者、子どもたち、保護者、育ての親、地域の人たち)は家族として共に暮らしながら 生きている喜びを味わい、社会的自尊感情と基本的自尊感情を “一体”として 高めていかなければなりません。

即ち 運動会やX’mas生活発表会など家庭生活、保育園での生活や行事をくり返しながら五感を刺激し、成功体験、失敗体験、喜怒哀楽など体験の共有、感情の共有を繰り返していくことが人間にとって大切な「生きる力、乗りこえる力」を育てるために必要なことなのです。

f:id:doushinkai:20180316174414j:plain

また私たちが目指すものは、子どもたち(乳幼児)の現在(いま)を最も良く生き、望ましい未来を作り出す力の基礎を培うために何をすべきか、が問われています。

改めて人間としての生きる基盤を考えた時、先に述べた基本的自尊感情「愛された育ち・抱きしめ言葉」につつまれながら、授けられた五感を刺激し続けなければなりません。

だから二つ目はニューロン神経細胞)とシナプス(神経回路)との関係になります。

私たちの知覚から認知運動に至るまで、あらゆる情報はニューロンという神経細胞が刺激されることによってシナプスが出来、そこにまたニューロンがつながり神経伝達物質がでて、次のシナプスに情報がつながるというのです。

だから最近の認知神経科学脳科学の世界では、外環境・自然環境などを活用しながらたくさんの刺激を与えることでシナプスの数を増やすことが重要であり、

0~3,4歳までがピークになります。

一方で、シナプスができなかった神経細胞は不要とされ死んでいきます。

(これを “刈り込み現象” といいます。)

だから私たち(社福)童心会の保育は、次のようになっています。

視覚   観(見)て  学び     嗅覚   においを 嗅いで

聴覚   聴(聞)いて 習い  味覚   味を  味わう   

触覚   触れて 感じ     (五味、五色、五感)

そして  すべてを意識(心)で受けとめながら(体験の共有、感情の共有)意欲、意志、智慧を高めることになります。

私たちはこのような「0歳からの人間教育」を昭和48年(1973年)から始めてきました。

1990年頃から認知神経科学の台頭があり、特に1995年 京都大学のfMRI(機能的MRI)の導入は私たちの行っている 人間教育にエビデンスを与えてくれました。

そして2000年には 視覚・聴覚のミラーニューロン(身体化による認知・模倣)も発見されました。

しかし未だにこのような「人間科学を取り入れた人間教育」には至っておりません。

だから私は「アクティブラーニング」ではなく、

ECEC(Early Childhood Education and Care)早期乳幼児の教育・保育には、スマートラーニング(賢い学び方)が必要であり、それは 「内なる感動から生まれる学びの姿勢」 であります。

だから今、私たちに与えられている役割は、0歳からの人間教育、非認知能力を高めていくことがこの社会に求められているのではないか、と強く思っているのです。

                         

参考文献 : 『脳科学から見る子どもの心の育ち』 乾 敏郎 著  ミネルヴァ書房

       『乳幼児期から育む自尊感情 』 近藤 卓 著  エイデル研究所

 

平成 29 年 12月 吉日

社会福祉法人 童心会

理事長  中山 勲