思いやりと生きる力

わたしを ぎゅっとして わたしを 見つめて わたしを 聞いて わたしを 呼んで

H30_6【 再び ECEC(Early Childhood Education and Care) を考える 】

OECDは2001年に Starting Strong Ⅰ(人生の始まりこそ力強く)を発表した時、ECECを「乳幼児期の教育とケア」と解釈しています。

そして

Education and careとは”生涯学習と養育とケア”を一体化されることを意味している

と書いてありました。

 

日本ではこのような「人生100年の時代」に学校関係者の一部の人たちは小学校教育、中学校教育、高校教育を生涯教育として人間教育を捉えるべきであると進化した教育論を述べる人たちもいました。

 

そして今回の教育改革の重要なキーワードは

アクティブ・ラーニング(主体的、対話的で深い学び)

であるといっています。

 

また2018(平成30)年4月に改訂された「保育所保育指針」の中では第1に「子ども・子育て」を社会全体で支えること、第2に小学校以上の「学習指導要録」の改訂があり、5年10年後の予測できない社会を生きぬく子どもたちの大きな課題に対する教育の転換が必要とされていることが背景にあると書いていました。(玉川大学 大豆生田啓友教授が保育通信2018年1月号に掲載)

特に人生のスタートを支える保育の役割は重要であり「遊び が 学び」を行う専門性が問われ、また「養護」を基盤とした保育を行うことが求められているといっています。

 

だから保育はECECといわれ、教育とケアは一体的な営みだというのです。OECDが「Education and care」教育・保育を並列においたことでどちらが上であるとかの論議はなくなりました。その後、幼稚園関係者の話を聞くと、自分たちは「幼稚園教育」という領域の中で教育を進めていくといっていました。

 

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最後に私たち(社福)童心会の人間教育観を示してまとめにかえたいと思います。                                                                  

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私は人間教育(生涯学習・生涯教育)を考えた時、人生は「生まれ、育ち、産み、育て、老い、死ぬ」という一連のプロセスを一巡するライフスタイルであると考えています。

まだ若い学問であると言われている「臨床教育学の生成」(皇紀夫 編著 玉川大学出版部) その中で執筆者たちは教育から人間形成へと歩む、相互形成の人間形成論を唱えています。

即ち人間教育学は人間形成論から臨床的人間形成論へと発展していくものかも知れないというのです。

 

だからOECDは、「幼い子どもは、年齢によらず人権の完全なる主体であり、国連子どもの権利条約が示すように、幼い子ども、皆、乳児期からの発達と教育への権利を有する」とありました。

また、「近年の脳神経科学研究により、子ども、特に3歳児未満の人生の最初期にある子どもは、有能な学習者であることが確かとなった」というのです。

 

こうした中にあって(社福)童心会の人間教育の理念を確認したいと思いました。

人間としての生きる基盤

 〇愛された育ちの保障

   愛されることは子どもの権利である  

 〇 抱  き  し  め  言  葉 

   養育者(親を含めて)の義務(務め)である。

 

最後に「愛されている」ことの言葉の意味を確認し、終りにしたいと思います。

「愛されている」

 1、信頼されている     4、認められている            

 2、感謝されている             5、必要とされている

 3、頼りにされている    6、大切にされている

                                        

平成 30年 6月 吉日

社会福祉法人 童心会

理事長  中山 勲

H30_05【 子ども ・ 大人 ・ 人とのつながり 】

私たちは平成30年度、「新採用 保育者仲間 応援マニュアル」の中で、社会福祉法人童心会の信条 (Ourcredo)の意味を全員で話し合い、考えを深めました。

  <やさしい 保育園>

・子どもに やさしい      

・保育者仲間に やさしい

・子育て仲間に やさしい    

・地域社会に やさしい

 

今なぜ、「やさしい 保育園」が社会に求められているのかを考えてみたとき、前 筑波大学教授 ・前 筑波学院大学学長の門脇 厚司氏が2005年に出版された「社会力がよく分かる本」(学事出版)を思い出しました。

「社会力」とは、人が人とつながり、社会を作り、そして社会をつくり変えていく意欲であり、能力のことである」「そしてまた社会力のおおもとが、他人に対する関心であり、愛着であり、信頼感である」と言っているのです。

私は改めて 「社会力のおおもとが、他人に対する関心であり、愛着であり、信頼感である」というのなら、あえて今その "社会力" が失われた おおもと を考えなければいけないと思いました。

私も古い人間ですから 1950年代 私の家では兄弟姉妹9人、家族11人で過ごしてきました。

ご近所の町内には長屋もあり、共同井戸もあり 子どもたちが遊ぶ広場もあり子ども社会もあり、当然私はガキ大将でした。

当時を振り返ってみると、次のような社会の仕組みだったような気がします。

 

<昔の社会教育力>

1.家庭の教育力     

2.ご近所の教育力      

3.子ども社会の教育力

4.学校の教育力      

5.地域社会の教育力

このような"人と人とのつながり、大人とのかかわり"のなかで、人間教育がなされていたように思います。

そしてこれらが失われた「社会力のおおもと」のような気がしてならないのです。

 

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諏訪中央病院名誉院長 鎌田 實さんと京都府立医科大学学長 古川敏一さんとのある対談の中で一番印象に残った言葉がありました。

「人の命は三つのつながりによって守られている」

・人と人とのつながり  

・人と自然とのつながり  

・体と心のつながり

この三つのつながりが一つでも切れると、人間は生きづらくなるというのです。

この対談集を振り返りながら改めて(社福)童心会の保育を見つめ直して見ると

次のような「0歳からの人間教育」につながっています。

1. 人間としての生きる基盤

愛された育ちの保障(だきしめ言葉)私たちは「ふれあいと見まもり」 「だきしめ言葉」を通して、愛のある人と人とのつながりを大切にしています。

2. 0歳からの五感を刺激する保育

子どもたちは授けられた五感、見る(視覚) 聞く(聴覚) 触る(触覚・体性感覚)などから刺激を受けて、脳のシナプス(神経回路)のネットワークが構築されると言われています。

だから私たちは積極的に外環境、四季などの自然環境を取り入れた保育を重視し、実践しています。

3. 体と心のつながり

私たちは「運動、心、体、脳」 という言葉に 「暮らし」という言葉を入れて人間が行う「行動・活動」 を “行”として身につけさせることを大切にしています。

改めて私は、温かなやさしい社会を作るための「昔の社会教育力」を知る者として新しい時代にあったプログラムを作る必要があると知り、次のように組み立てを考えてみました。

 

<人間を 創る>

・ひとりで できる  ・ひとりで できた  ・ひとりで 生きる

・みんなと できる  ・みんなと できた  ・みんなと 生きる

・人のために できる ・人のために できた ・人のために 生きる

・助けあって できる ・助け合って できた ・助け合って 生きる

 

最近200万部も売れた吉野源三郎さんの 「君たちは どう生きるか」という

日本を代表する名著があります。

その本の “まえがき” の中でジャーナリスト・名城大学教授の池上彰さんは「私たちは どう生きるか」を問いかけています。

今日まで(社福)童心会は「人間として如何に生きるべきか」を学ぶための原体験をつくる人間教育を目指してきました。

だから私は今日、改めて皆さまに問いかけたいと思いました。

「君は ヒトとして どう生きるか」     

                        

平成 30年 5月 吉日

社会福祉法人 童心会

 理事長  中山 勲

        

H30_04 ようこそ(社福)童心会ワールドへ

~だきしめ言葉から始まるメンタルへルス・ケア~


平成30年4月2日(月)に入園式が挙行され、社会福祉法人童心会「柏ECEC保育園」が誕生しました。
〔ECECとは、Early Childhood Education and Care(人生初期の教育と保育)の意味です〕
場所はJR柏駅東口から南へ約400m位に位置する、柏市柏6-4-26番地に開園しました。
水戸街道に面する、駅近くの利便性の高い保育園です。
今、待機児童の問題だけが世間ではクローズアップされていますが、過疎地域の問題や保育の内容や保育の質を見つめた時、何が失われて今があるのかを知ることから、保育の本質を知らなければならないと思いました。f:id:doushinkai:20180606103150j:plain


今日の日本では、大家族世帯の崩壊が言われてから久しく、家庭の教育力、ご近所の教育力、子ども社会の教育力、学校の教育力、地域社会の教育力が失われてきて今があると言われ続けています。
地域や大家族からのしがらみから離れて核家族化を望み、自由を手に入れた子育て世代にその代償として失われたものもたくさんあるのです。
その代表的なものが多様化する家族の形態から生まれる、世代間連鎖と言われるものです。


三世代にわたる世代間連鎖(伝達)

虐待の世代間連鎖(伝達)
貧困の世代間連鎖(伝達)
離婚の世代間連鎖(伝達)
精神病理の世代間連鎖(伝達)
失われた子育て文化の世代間連鎖(伝達)
発達障害の世代間連鎖(伝達)etc.


このような時代にあって、1980年に生まれた世界乳幼児精神医学会は、1992年国際乳幼児保健学会と融合し、新たに世界乳幼児精神保健学(WAIMH)が誕生しました。
乳幼児精神保健は、8項目の基本認識にたっています。(8項目からの抜粋)


世界乳幼児精神保健の基本的認識

1. 乳幼児は養育環境との能動的な相互作用の中で発達する存在である。
2. 乳幼児の問題は乳幼児と養育環境の関係性の障害と考え、治療は関係性の改善に取り組む。
6. 異なる社会文化的環境下での発達の多様性を理解する。
8. 精神病理の世代間伝達が乳幼児期からどのように生じるのか、そのメカニズムの解明と予防のあり方を研究する。

 

現在、世界乳幼児精神保健学会が行っている母親と乳幼児への実践的援助を柱にした活動は、上に述べたように乳幼児の問題を「乳幼児と養育環境の関係性の障害」と考え、早期発見、対応とフォローアップにより、個人の精神衛生の向上と精神病理の予防を目指して発展したと言われています。(渡辺久子:「子育て支援と世代間伝達」金剛出版)

 

私は、こうした流れから、精神病理等の世代間連鎖(伝達)の予防的な意味を含めて、新しい保育技法(メンタルへルス・ケア)の重要性を感じたのです。

それは「愛された育ち(だきしめ言葉)から始まる新しい保育技法(メンタルへルス・ケア)」の必要性です。


メンタルへルス・ケア(心と体の健康)

1. 子どもに対するメンタルへルス・ケア
2. 子育て仲間(保護者)に対するメンタルへルス・ケア
3. 保育者仲間に対するメンタルへルス・ケア
4. 地域社会に対するメンタルへルス・ケア


最後に、究極的に社会福祉法人童心会が目指しているものは、保育園を核とした「失われた新しい地域コミュニティ創り(新しい村づくり)」です。
村中が総出で田植えをしていた時代のように、村人たちがひとり残らず挙って(こぞって)参加しながら "助けあって生きる" を、子どもたちの心に伝えてあげることが、今地域に求められていると思っているからです。


保護者の皆さま、あなた方は「産みの親」、私たちは「育ての親」です。
でも、あなた方もこの童心会の保育園の村人として、自分の子どもにだけ愛情を振る舞うのではなく、この保育園で生活している「村人の子どもたち」に対して、一人ひとりが育ての親になってほしいと願っているのです。

 

(社福)童心会という村の子どもたちみんなを、大人たちみんなで育てましょう!!

 

今日から新しいヒューマンネットワーク(新しい村づくり)の始まりです。
皆さま、今年度もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

平成 30 年 4 月吉日
社会福祉法人 童心会
理事長 中山 勲