思いやりと生きる力

わたしを ぎゅっとして わたしを 見つめて わたしを 聞いて わたしを 呼んで

H30_7【 家族であること ・ 共同生活者であること 】

私が今年4月から子どもたちや保育者仲間たちと生活している柏ECEC保育園では
(社福)童心会の伝統として受け継がれてきたしきたりがあります。
それは家でも保育園の中でも、そこに生活する人たちは皆が

「家族であり、共同生活者(児)である」という考え方です。


私たちの園では保育者仲間たちだけが”先生”ではありません。
子どもたちもお兄ちゃん先生、お姉ちゃん先生、それにお友だち先生にもなります。
そしてまたパパ先生、ママ先生もいます。
そして家に帰っても家族であると共に共同生活者(児)として見つめてもらうことにしています。
だから家では家族としての子どもとしてではなく、小さなお父さん、小さなお母さんとして活躍してくれることをお願いしております。


先の6月には課題学習にある「挨拶名人」さくら組(5才児)さんから4人が表彰されました。
そして登り棒(2.5m)に登れたさくら組(5才児)からAさん、
たんぽぽ組(3才児)から BさんCさんの2名が表彰されました。


私が今日皆さまに一番お知らせしたいニュースは、
4月からの毎日の朝会の時からお話ししていたことなのですが
「お家では小さなお父さん、小さなお母さんになってママのお手伝いをしてくれるように」
お願いしていたことを、もも組1才7ヶ月のD子さんが約束を守って表彰されたのです。
D子さんは賞状をお家に帰ってお父さんに見せびらかしながら
一日中賞状を大切に持っていたそうです。

改めて家族の人たちのご協力と仲間たちの励ましと保育者仲間たちの応援があって
”生きていく力”が身につくものであることがよく分かりました。
この表彰があってから多くのお母さんたちから
家の子もお手伝いをするようになりました、という声がたくさんありました。


また保育園では 0才児(ばら組さん)、1才児(もも組さん)たちは
歩けるようになると仲間たちのためにおやつを運んだり お手伝いをしてくれています。
また感動的なお話ですが、異年齢児交流保育の時にペア歩行中に小さい子がころんだ時、
先生より先にかけよって

「大丈夫、イタくなかった?」

と やさしく言葉かけをしてくれます。
たくさんの子どもたちが 先生やお兄ちゃん先生、お姉ちゃん先生のやさしさを身につけてくれています。


前にもお話したことがあるのですが、アフリカの諺(ことわざ)の中に
子どもを一人育てるためには、“一つの村” が必要なのです
という言葉を忘れることができません。
だから私がよく皆さまに問いかける言葉、

保育所は今、何をする所ですか?」を一緒にふり返って考えていきたいと思いました。
保育所は今、生みの親の保護者の皆さまと、私たち保育者仲間が育ての親となって、
一緒に”(社福)童心会の村づくり”に励むところです。
そして次世代に生きる子どもたちに、責任をもってWell-being(幸せな人生)を送らせたいと思っています。
そのために私たち(社福)童心会の【保育者仲間の心得】
皆さまにお伝えして 私たちの姿勢をご理解して頂けたらと思いました。

社会福祉法人 童心会

【保育者仲間の心得】
〇共同生活者に私たちの生き方を身をもってお伝えしていますか?
1)とびっきりの笑顔      5)ふれあうこと(ハイタッチ)
2)心をこめたご挨拶      6)認めあうこと
3)思いやりのあるひと言    7)伝えあうこと
4)いつも忘れない感謝の心   8)楽しみあうこと
                           以上

                   平成 30年 7月 吉日

                   社会福祉法人 童心会

                   理事長 中山 勲

H30_6【 再び ECEC(Early Childhood Education and Care) を考える 】

OECDは2001年に Starting Strong Ⅰ(人生の始まりこそ力強く)を発表した時、ECECを「乳幼児期の教育とケア」と解釈しています。

そして

Education and careとは”生涯学習と養育とケア”を一体化されることを意味している

と書いてありました。

 

日本ではこのような「人生100年の時代」に学校関係者の一部の人たちは小学校教育、中学校教育、高校教育を生涯教育として人間教育を捉えるべきであると進化した教育論を述べる人たちもいました。

 

そして今回の教育改革の重要なキーワードは

アクティブ・ラーニング(主体的、対話的で深い学び)

であるといっています。

 

また2018(平成30)年4月に改訂された「保育所保育指針」の中では第1に「子ども・子育て」を社会全体で支えること、第2に小学校以上の「学習指導要録」の改訂があり、5年10年後の予測できない社会を生きぬく子どもたちの大きな課題に対する教育の転換が必要とされていることが背景にあると書いていました。(玉川大学 大豆生田啓友教授が保育通信2018年1月号に掲載)

特に人生のスタートを支える保育の役割は重要であり「遊び が 学び」を行う専門性が問われ、また「養護」を基盤とした保育を行うことが求められているといっています。

 

だから保育はECECといわれ、教育とケアは一体的な営みだというのです。OECDが「Education and care」教育・保育を並列においたことでどちらが上であるとかの論議はなくなりました。その後、幼稚園関係者の話を聞くと、自分たちは「幼稚園教育」という領域の中で教育を進めていくといっていました。

 

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最後に私たち(社福)童心会の人間教育観を示してまとめにかえたいと思います。                                                                  

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私は人間教育(生涯学習・生涯教育)を考えた時、人生は「生まれ、育ち、産み、育て、老い、死ぬ」という一連のプロセスを一巡するライフスタイルであると考えています。

まだ若い学問であると言われている「臨床教育学の生成」(皇紀夫 編著 玉川大学出版部) その中で執筆者たちは教育から人間形成へと歩む、相互形成の人間形成論を唱えています。

即ち人間教育学は人間形成論から臨床的人間形成論へと発展していくものかも知れないというのです。

 

だからOECDは、「幼い子どもは、年齢によらず人権の完全なる主体であり、国連子どもの権利条約が示すように、幼い子ども、皆、乳児期からの発達と教育への権利を有する」とありました。

また、「近年の脳神経科学研究により、子ども、特に3歳児未満の人生の最初期にある子どもは、有能な学習者であることが確かとなった」というのです。

 

こうした中にあって(社福)童心会の人間教育の理念を確認したいと思いました。

人間としての生きる基盤

 〇愛された育ちの保障

   愛されることは子どもの権利である  

 〇 抱  き  し  め  言  葉 

   養育者(親を含めて)の義務(務め)である。

 

最後に「愛されている」ことの言葉の意味を確認し、終りにしたいと思います。

「愛されている」

 1、信頼されている     4、認められている            

 2、感謝されている             5、必要とされている

 3、頼りにされている    6、大切にされている

                                        

平成 30年 6月 吉日

社会福祉法人 童心会

理事長  中山 勲

H30_05【 子ども ・ 大人 ・ 人とのつながり 】

私たちは平成30年度、「新採用 保育者仲間 応援マニュアル」の中で、社会福祉法人童心会の信条 (Ourcredo)の意味を全員で話し合い、考えを深めました。

  <やさしい 保育園>

・子どもに やさしい      

・保育者仲間に やさしい

・子育て仲間に やさしい    

・地域社会に やさしい

 

今なぜ、「やさしい 保育園」が社会に求められているのかを考えてみたとき、前 筑波大学教授 ・前 筑波学院大学学長の門脇 厚司氏が2005年に出版された「社会力がよく分かる本」(学事出版)を思い出しました。

「社会力」とは、人が人とつながり、社会を作り、そして社会をつくり変えていく意欲であり、能力のことである」「そしてまた社会力のおおもとが、他人に対する関心であり、愛着であり、信頼感である」と言っているのです。

私は改めて 「社会力のおおもとが、他人に対する関心であり、愛着であり、信頼感である」というのなら、あえて今その "社会力" が失われた おおもと を考えなければいけないと思いました。

私も古い人間ですから 1950年代 私の家では兄弟姉妹9人、家族11人で過ごしてきました。

ご近所の町内には長屋もあり、共同井戸もあり 子どもたちが遊ぶ広場もあり子ども社会もあり、当然私はガキ大将でした。

当時を振り返ってみると、次のような社会の仕組みだったような気がします。

 

<昔の社会教育力>

1.家庭の教育力     

2.ご近所の教育力      

3.子ども社会の教育力

4.学校の教育力      

5.地域社会の教育力

このような"人と人とのつながり、大人とのかかわり"のなかで、人間教育がなされていたように思います。

そしてこれらが失われた「社会力のおおもと」のような気がしてならないのです。

 

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諏訪中央病院名誉院長 鎌田 實さんと京都府立医科大学学長 古川敏一さんとのある対談の中で一番印象に残った言葉がありました。

「人の命は三つのつながりによって守られている」

・人と人とのつながり  

・人と自然とのつながり  

・体と心のつながり

この三つのつながりが一つでも切れると、人間は生きづらくなるというのです。

この対談集を振り返りながら改めて(社福)童心会の保育を見つめ直して見ると

次のような「0歳からの人間教育」につながっています。

1. 人間としての生きる基盤

愛された育ちの保障(だきしめ言葉)私たちは「ふれあいと見まもり」 「だきしめ言葉」を通して、愛のある人と人とのつながりを大切にしています。

2. 0歳からの五感を刺激する保育

子どもたちは授けられた五感、見る(視覚) 聞く(聴覚) 触る(触覚・体性感覚)などから刺激を受けて、脳のシナプス(神経回路)のネットワークが構築されると言われています。

だから私たちは積極的に外環境、四季などの自然環境を取り入れた保育を重視し、実践しています。

3. 体と心のつながり

私たちは「運動、心、体、脳」 という言葉に 「暮らし」という言葉を入れて人間が行う「行動・活動」 を “行”として身につけさせることを大切にしています。

改めて私は、温かなやさしい社会を作るための「昔の社会教育力」を知る者として新しい時代にあったプログラムを作る必要があると知り、次のように組み立てを考えてみました。

 

<人間を 創る>

・ひとりで できる  ・ひとりで できた  ・ひとりで 生きる

・みんなと できる  ・みんなと できた  ・みんなと 生きる

・人のために できる ・人のために できた ・人のために 生きる

・助けあって できる ・助け合って できた ・助け合って 生きる

 

最近200万部も売れた吉野源三郎さんの 「君たちは どう生きるか」という

日本を代表する名著があります。

その本の “まえがき” の中でジャーナリスト・名城大学教授の池上彰さんは「私たちは どう生きるか」を問いかけています。

今日まで(社福)童心会は「人間として如何に生きるべきか」を学ぶための原体験をつくる人間教育を目指してきました。

だから私は今日、改めて皆さまに問いかけたいと思いました。

「君は ヒトとして どう生きるか」     

                        

平成 30年 5月 吉日

社会福祉法人 童心会

 理事長  中山 勲