思いやりと生きる力

わたしを ぎゅっとして わたしを 見つめて わたしを 聞いて わたしを 呼んで

 私たち(社福)童心会が取り組んできた「五感を刺激する 0 歳からの人間教育」 の中で日々の学び・6 年間の学びを通して身につけた成果は次のようになりました。

 下記の言葉は柏中央保育園のさくら組(年長児)さんがXmas 生活発表会の中で、
六年間仲間たちとの生活を通して学んだ「人生訓」を発表したものです。

     ~5 歳児が学んだ人生訓~

  1.  友達と遊んでいる時間は楽しい気持ちで笑顔がいっぱいになりました。
  2.  大好きな友だちとケンカした時は悲しい気持ちになりました。
  3.  泣いているときは涙を拭いてくれたり、側にいてくれてやさしい気持ちになりました。
  4.  自分たちで炊いたご飯や保育園の食事はおいしくて幸せな気持ちになりました。
  5.  マラソンで走っていると苦しくな ったけど 、毎日努力することの大切さを学びました。
  6.  10 kmウォークやお泊まり保育の前はみんなが応援してくれたから”やるぞ!”という気持ちになりました。

 この子どもたちがこのように成長するためには(社福)童心会の訓えがあったのです。家庭の中にあっては生活者の一人として小さなお父さん・小さなお母さんとしてお手伝いをすることでした。
 またクラスの中では常に”おともだち先生として、みんなのためになれる人”を目指してきました。
 さらに保育園の中でひまわり組(4 歳児 )さくら組( 5 歳児)になるとお兄ちゃん先生、お姉ちゃん先生として「ふれあい、ぬくもり、おもいやりの精神」を伝え合ってきたのです。
 最近聞いたお話では童心会の保育園に通園しているもも組(1 歳児)さんの子が家に帰ってからリーダーのお当番の真似をしたり、お掃除やゴミすて、食事のお片付けなどもしてママを助けてあげているというお話しなど を、 他にも たくさんの方から聞いてきました。

 いつもお伝えしている私たちの考える人間教育(生涯学習・生涯教育)の生きる心得は次のようになっています。


人間としての生きる心得


・笑顔  (朝からとびっきりの笑顔の贈り物)
挨拶  (いつも相手の心に伝わるご挨拶)
思いやり(すべてのものの悲しみや苦しみに寄りそう心)
感謝  (いつもどこでもありがとうの心を忘れない)

改めて言うまでもなく私たちの人間教育(生涯学習・生涯教育) の道しるべは 、

well- being「心も体も健康で、 社会的にもより良い幸せな生活を送ることができる人」

を育てることです。


 昔からよく保育園を知る人は、保育園とは

「保育に欠ける子どもたち、そして最近では保育を必要とする子どもたち」
のお世話をするところだと言われてきました。


 私たちはここで改めて2001 年に発表された OECD の「保育白書」の意味を深く捉えていかなければならないと思いました。


○新しい科学の世界では、乳幼児は有能な学習者であると実証された。
○人生の始まりこそ力強く( Starting strong )をはじめよう


 奇しくもOECD は 2015 年頃から保育白書の中で「保育の質の向上」を唱いはじめました。日本では2018 年の保育指針の改訂 に伴い 、学界でも日本版「保育の質の向上」
の検討を始めましたが、今だに結論 も 方向性さえ見えて い ません。


 私は今年実習生の家庭 生活の 様子 を知るために
「笑顔・挨拶・思いやり・感謝」
の言葉を実習園 だけ ではなくて家庭で実行するように指示しましたら家族の人たちの驚くような反応を知らされました。そして改めて考えさせられました。

 (社福)童心会の人間教育とは、保育者仲間や 子どたちだけでなく 、保護者の皆さまも 一緒に 、子どもたちの 「日々の学び・六年間の学び」を通して身につけた人生訓のように修養を通して自分の人間性を高めることだと思っています。


 そして私たちが目指す ”利他の心 ”を持つ

「みんなのために、人のために尽くすことのできる人」
に育ってほしいと願ってきたのです。


 保育者仲間や子ども達、保護者の皆さまを含めた私たち大人が目指す道は子どもたちの現在(いま)を最も良く生き、望ましい未来を作り出す力の基礎を培うため、時代の変化に対応する人間教育を創造し、実践して道しるべになることなのです。
 だから私たちは「保育の質」を問うのではなく「人間教育の本質」を求めていかなければならないのです。


 そしてその命題は

「私たちみんなが人間として如何に生きるべきか?」
を問い続け、実行していか なければならないのです。

 

 今年度も一年間のご協力ありがとうございました。至らない所も多々あったかと思いますが、今後も未来人を育てる思いを込めて私たちの人間性を高めてゆく心掛けを目指していきたいと思っています。どうそよろしくお願いいたします。


   令和3 年 3 月 吉日
   社会福祉法人 童心会
   理事長 中山 勲

 

〔 今コロナ禍の意味を考える 〕 ~人類に与えられたパンデミックの歴史をふり返る

 今年もはやすでに暦の上では2月、如月(きさらぎ)になりました。
寒さが厳しさを増すなかで、ほんおり春の気配を感じさせてくれる季節です。

 如月の二十四節気、七十二候の中には、2月2 日お稲荷様と初午、2月3日季節の分かれ目、節分、2月4日立春大吉、2月5日春告草(梅の花)、2月7日春一番、2月8日針供養、2月9日雨水などの昔から伝えられてきた仕来りがあります。

 いつものような月日の移ろいなら、穏やかな仕来りが以前からのならわしの如く引き継がれ、節分や立春、春告草を迎える手はずを準備しているはずでした。
 しかし2019年から始まったcovid19(新型コロナウィルス)の感染者の数は留まるところを知りません。

 私たちはこのような困難に陥った時には、過去の歴史に学ばなければなりませんが、
人類に与えられた健康問題のパンデミックの試練は次のようになっています。

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 イスラエル歴史学者で「サピエンス全史」などの著者:ユヴェル・ノア・ハラ リ 氏は、新型コロナウィルスによる健康危機が引き起こしかねない帰結を分析し、各国間の科学的な協力と情報交換の拡大の 重要性を指摘していました。

 

Q: 今回の健康問題のパンデミック(世界的流行)は過去の健康危機とどう異なり、
それは何を意味するのでしょうか?

A: 私たちが直面しているのが世界的健康脅威として最悪か否かは定かでない。
1918~1919 年のインフルエンザの伝染の方が悪質だったし、エイズの伝染もおそらく、より悪質で、全時代のパンデミックのほうが、悪質だったのは確かだ。
 ただし、新型コロナウィルスは医療危機だけではない。深刻な経済的、政治的危機ももたらす。私が恐れるのはむしろウィルス自体より憎しみ、貪欲、無知といった人類の悪魔のほうだ。 (PRESIDENT2020.10.16 号 /UNESCO Courier のインタビュー /P20)
 

 このウィルスは私たちが人間として持つ最善の本能を利用して広がる。私たち社会的動物なのだ。
 特に困難な時期には私たちは接触を求める。親戚、友人、隣人が病気になれば、私たちには慈悲の精神が生じ、助けに行きたいと思う。このウィルスはそうした私たちの行動を利用して伝染する。
(中略)
 この危機が終われば、基本的な人間の本能に対する長期的な影響はない。
 私たちは社会的動物であり続け、接触を好み続けるだろう。友人や親戚を助けに行き続けるだろう。
 次に世界的な賢者ジャック・アタリ氏(1981 年フランスミッテラン大統領顧問などの要職を歴任)は次のように語っていました。(PRESIDENT/2021.1.1 号 /P58)

 

 「今回のコロナ危機が発生してから私の怒りの一つ目の理由は、多くの人々が
パンデミックという悪夢が終われば、危機が発生する以前の世界に戻ることができると考えているからだ。
 だが、ワクチンや治療薬が開発され、パンデミックが収束したとしても、社会を元通りに戻すことは絶対にやってはいけない。以前の社会こそがこの危機を生み出した」と看破しています。

 

 『怒りの三つめの理由は、多くの為政者が国民の健康維持は国にとって負担ではなく財産なのだ、と理解してこなかったことだ。国民の命を大切にしないことに対する、この怒りは「命の経済」というコンセプトにつながる』 と言っています。

 

ジャック・アタリ氏の言う「命の経済」につながるコンセプトは次のようになります。

1 まずは健康を守る部 門 。医療産業全般(病院・医師・看護師 他
2 健全な農業、水、食料、食品売り場の安全
3 教育部 門 、教育、職業訓練、 転職 支援のための 研修。
4 デジタル化に関する部 門 、 研究者 、再生可能エネルギー関係。
5 治安維持、報道の自由(情報開示)、ジャーナリズム
6 芸術、文化、保険、金融 etc.

 

 今、即時の成果、不安定な生活、利己主義が世の中の規範になった現在、われわれは未来に備え、利他主義の精神に準じて将来世代に資する「ポジティブな社会」と「闘う民主主義」が両輪となる社会を再構築していけば、われわれは明るい未来を築くことができるはずだ、とまとめていました。

 

 今TV では世界で covid 19 の感染者が 95 543 548 人( 2020.1.19 現在)になったと報じています。
 このコロナ禍の中にあっても、この世界の一隅に多くの人たちと共にひっそりと暮らす私には「冬来たりなば春遠からじ」の言葉が如月の春風につつまれて届けられてきました。
 いよいよ春本番、この私をますます萌え出ずる弥生(やよい)の世界に誘(いざな)うかのようです。
 令和3年2月吉日
 社会福祉法人 童心会
 理事長 中山 勲

コロナ禍の中で見つけた”新たな 日常”( New Normal)

 京都市の北東方に比叡山という山があり、東の中腹に天台宗の総本山延暦寺があります。その天台宗の「一隅を照らす運動」の中に「無財の七施(むざいのしちせ)」があります。
 仏教には、人々が人間形成に努めて幸せや安らぎの境地に至る道「ありがとう」「おかげさま」の気持ちを行動で表す身近な実践として説かれている教えがたくさんあります。その第1 番目が布施です。
 布施の「布」は分け隔てなく、すべてにわたって広く、「施」は文字通りほどこすという意味です。


 私はこのコロナ禍の長い時間の中で改めて見直した”新たな日常”New Normal の中で
「(社福)童心会のSpirit (精神・魂)」を原点回帰するために再確認いたしました。
 

 そして私たちの日常生活においてお金がなくても、物が無くても、ましてや今のこの閉塞的なコロナ禍の中で、心苦しい暗いニュースを見聞きする中で、子どもたちの笑顔に負けない周囲の人々に喜びを与えていく教えが「無財の七施」だと思いました。

 

無財の七施

 

1.眼慈施 (やさしい眼差しで見守ること)

2.和顔施 (とびっきりの笑顔でおもてなし)

3.言辞施 (思いやる挨拶や感謝の言葉)

4.身施 (体で他人のために尽くすこと)

5.心施 (痛みや苦しみに寄り添う心)

6.床座施 (席や場所を譲ることなど)

7.房舎施 (来客に対しておもてなし)

 

 私たちは「ヒトの成り立ち」のはじまりをEvidence Based (科学的根拠に基づいて)として捉えてみた時、何か目に見えない大きな力が働いていることに畏怖の念を感じ、畏敬の想いを心に感じます。
 特に胎生期28 週には 視覚・聴覚・体制感覚 を身につけて生命を授けられる不思議を
私たちは持つべきなのではないかと思いました。

 

 また、肺呼吸を授けられて生命の誕生を迎えた時、五感を授けられている不思議にも、私たちは目を向けなければいけません。
 改めて言うまでもありませんが、五感 とは 視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚 をいいます。いつも何気なく目にしていた言葉ではありましたが”覚”という文字を広辞苑を開いて調べてみました。

 

○覚   ①感ずること。覚えること。
   ②〔 仏 〕 悟り、悟りの智慧。覚悟。
○悟り  ①理解すること。知ること。気づくこと。
   ②〔 仏 〕 まよいが解けて真理を会得すること。

 

 私はこれを読んでヒト(ホモ・サピエンス)が生得的に五感を授けられた意味を考えてみました。(社福)童心会には開園当初から「五感を刺激する 0 歳からの人間教育」という大命題があります。
 即ちヒトの学びは「見て倣い、観せて学び、聞いて考え、聞かせて習う、触れて知って、触って記憶する」から始まると考えてきました。

 

 だから五感の”覚”とはただ知ること、理解することだけではなく、学びを通して真理を会得すること、悟りの智慧(実人生を生き抜く力)を身につけることであると確信しています。
 そして私たち(社福)童心会の理念「ヒトを 創る」 は次のようになったのです。

 

(社福)童心会の訓〔 ヒトとして如何に生きるべきか 〕


1.生きる をつづける人(興 味)

2.学 び をつづける人(関 心) 

3.知 る をつづける人(好奇心) 

4 .やる気 をつづける人(意 欲)

5 .げん気 をつづける人(気 力)

6 .願 い をつづける人 (意 志)

 

 私の知る限りでは、1945 年からの戦後を振り返ってみた時、第一次ベビーブーム、高度経済成長期、第二次ベビーブーム、育児不安、 イライラ 感 、 荒 れた 中 ・小学校、体罰による子育て、いじめ、引きこもり、壊れる子どもたち、クレーマーなどの出現で保育所も学校も感情労働の職場と言われるようになってしまいました。


 ECEC(乳幼児期の教育と Care )と言われた時代は今、失われようとしているのです。だから私たち(社福)童心会が今考える人間教育(生涯学習・生涯教育) の考え方は次のようになりました。

 

〔Early Childhood Learning mind and Mental Healthcare 〕
~乳幼児期からの学ぶ心と 心と体の健康~

 

 改めて感情労働の職場としてではなく、Care mind を育てあいながらそれぞれが自分の人間性を高めあって、共に暮らす人々の心と体を和ませることのできる新たな日常(
New Normal )を創り続けたいと決意したのです。


 私たちが今求められている歩むべき道は法人だより12 月号にも書いた通りです。 いつの時代でも悟りの智慧(実人生を生き抜く力)は変わりません。もう一度読んでみて下さい。

 

 私は令和2 年( 2020 年)の最後の師走の月に私たち(社福)童心会の訓え「人間としてどう生きるか」という問いかけの中で村人(育ての親)の皆さまに私たちと同じような心得を是非育ててほしいと願い、祈りを込めて今これを書いています。

 

〔ヒトとして歩むべき道理 〕


1. 笑顔 (とびっきりの えがお) 

2. 挨拶 (心にとどく ごあいさつ)

3. 思いやり 苦しみに よりそう心)

4. 感謝 (心からの ありがとう)

5. 傾聴 (話しに 耳を傾けあう)

6. 受容 (心を 受けとめあう)

7. 共感 (ヒトと人とが 感じあう)

8. 共生 (助けあって 共に生きる)

 

  令和3 年 1 月 吉日
  社会福祉法人 童心会
  理事長 中山 勲