思いやりと生きる力

わたしを ぎゅっとして わたしを 見つめて わたしを 聞いて わたしを 呼んで

H30_05【 子ども ・ 大人 ・ 人とのつながり 】

私たちは平成30年度、「新採用 保育者仲間 応援マニュアル」の中で、社会福祉法人童心会の信条 (Ourcredo)の意味を全員で話し合い、考えを深めました。

  <やさしい 保育園>

・子どもに やさしい      

・保育者仲間に やさしい

・子育て仲間に やさしい    

・地域社会に やさしい

 

今なぜ、「やさしい 保育園」が社会に求められているのかを考えてみたとき、前 筑波大学教授 ・前 筑波学院大学学長の門脇 厚司氏が2005年に出版された「社会力がよく分かる本」(学事出版)を思い出しました。

「社会力」とは、人が人とつながり、社会を作り、そして社会をつくり変えていく意欲であり、能力のことである」「そしてまた社会力のおおもとが、他人に対する関心であり、愛着であり、信頼感である」と言っているのです。

私は改めて 「社会力のおおもとが、他人に対する関心であり、愛着であり、信頼感である」というのなら、あえて今その "社会力" が失われた おおもと を考えなければいけないと思いました。

私も古い人間ですから 1950年代 私の家では兄弟姉妹9人、家族11人で過ごしてきました。

ご近所の町内には長屋もあり、共同井戸もあり 子どもたちが遊ぶ広場もあり子ども社会もあり、当然私はガキ大将でした。

当時を振り返ってみると、次のような社会の仕組みだったような気がします。

 

<昔の社会教育力>

1.家庭の教育力     

2.ご近所の教育力      

3.子ども社会の教育力

4.学校の教育力      

5.地域社会の教育力

このような"人と人とのつながり、大人とのかかわり"のなかで、人間教育がなされていたように思います。

そしてこれらが失われた「社会力のおおもと」のような気がしてならないのです。

 

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諏訪中央病院名誉院長 鎌田 實さんと京都府立医科大学学長 古川敏一さんとのある対談の中で一番印象に残った言葉がありました。

「人の命は三つのつながりによって守られている」

・人と人とのつながり  

・人と自然とのつながり  

・体と心のつながり

この三つのつながりが一つでも切れると、人間は生きづらくなるというのです。

この対談集を振り返りながら改めて(社福)童心会の保育を見つめ直して見ると

次のような「0歳からの人間教育」につながっています。

1. 人間としての生きる基盤

愛された育ちの保障(だきしめ言葉)私たちは「ふれあいと見まもり」 「だきしめ言葉」を通して、愛のある人と人とのつながりを大切にしています。

2. 0歳からの五感を刺激する保育

子どもたちは授けられた五感、見る(視覚) 聞く(聴覚) 触る(触覚・体性感覚)などから刺激を受けて、脳のシナプス(神経回路)のネットワークが構築されると言われています。

だから私たちは積極的に外環境、四季などの自然環境を取り入れた保育を重視し、実践しています。

3. 体と心のつながり

私たちは「運動、心、体、脳」 という言葉に 「暮らし」という言葉を入れて人間が行う「行動・活動」 を “行”として身につけさせることを大切にしています。

改めて私は、温かなやさしい社会を作るための「昔の社会教育力」を知る者として新しい時代にあったプログラムを作る必要があると知り、次のように組み立てを考えてみました。

 

<人間を 創る>

・ひとりで できる  ・ひとりで できた  ・ひとりで 生きる

・みんなと できる  ・みんなと できた  ・みんなと 生きる

・人のために できる ・人のために できた ・人のために 生きる

・助けあって できる ・助け合って できた ・助け合って 生きる

 

最近200万部も売れた吉野源三郎さんの 「君たちは どう生きるか」という

日本を代表する名著があります。

その本の “まえがき” の中でジャーナリスト・名城大学教授の池上彰さんは「私たちは どう生きるか」を問いかけています。

今日まで(社福)童心会は「人間として如何に生きるべきか」を学ぶための原体験をつくる人間教育を目指してきました。

だから私は今日、改めて皆さまに問いかけたいと思いました。

「君は ヒトとして どう生きるか」     

                        

平成 30年 5月 吉日

社会福祉法人 童心会

 理事長  中山 勲

        

H30_04 ようこそ(社福)童心会ワールドへ

~だきしめ言葉から始まるメンタルへルス・ケア~


平成30年4月2日(月)に入園式が挙行され、社会福祉法人童心会「柏ECEC保育園」が誕生しました。
〔ECECとは、Early Childhood Education and Care(人生初期の教育と保育)の意味です〕
場所はJR柏駅東口から南へ約400m位に位置する、柏市柏6-4-26番地に開園しました。
水戸街道に面する、駅近くの利便性の高い保育園です。
今、待機児童の問題だけが世間ではクローズアップされていますが、過疎地域の問題や保育の内容や保育の質を見つめた時、何が失われて今があるのかを知ることから、保育の本質を知らなければならないと思いました。f:id:doushinkai:20180606103150j:plain


今日の日本では、大家族世帯の崩壊が言われてから久しく、家庭の教育力、ご近所の教育力、子ども社会の教育力、学校の教育力、地域社会の教育力が失われてきて今があると言われ続けています。
地域や大家族からのしがらみから離れて核家族化を望み、自由を手に入れた子育て世代にその代償として失われたものもたくさんあるのです。
その代表的なものが多様化する家族の形態から生まれる、世代間連鎖と言われるものです。


三世代にわたる世代間連鎖(伝達)

虐待の世代間連鎖(伝達)
貧困の世代間連鎖(伝達)
離婚の世代間連鎖(伝達)
精神病理の世代間連鎖(伝達)
失われた子育て文化の世代間連鎖(伝達)
発達障害の世代間連鎖(伝達)etc.


このような時代にあって、1980年に生まれた世界乳幼児精神医学会は、1992年国際乳幼児保健学会と融合し、新たに世界乳幼児精神保健学(WAIMH)が誕生しました。
乳幼児精神保健は、8項目の基本認識にたっています。(8項目からの抜粋)


世界乳幼児精神保健の基本的認識

1. 乳幼児は養育環境との能動的な相互作用の中で発達する存在である。
2. 乳幼児の問題は乳幼児と養育環境の関係性の障害と考え、治療は関係性の改善に取り組む。
6. 異なる社会文化的環境下での発達の多様性を理解する。
8. 精神病理の世代間伝達が乳幼児期からどのように生じるのか、そのメカニズムの解明と予防のあり方を研究する。

 

現在、世界乳幼児精神保健学会が行っている母親と乳幼児への実践的援助を柱にした活動は、上に述べたように乳幼児の問題を「乳幼児と養育環境の関係性の障害」と考え、早期発見、対応とフォローアップにより、個人の精神衛生の向上と精神病理の予防を目指して発展したと言われています。(渡辺久子:「子育て支援と世代間伝達」金剛出版)

 

私は、こうした流れから、精神病理等の世代間連鎖(伝達)の予防的な意味を含めて、新しい保育技法(メンタルへルス・ケア)の重要性を感じたのです。

それは「愛された育ち(だきしめ言葉)から始まる新しい保育技法(メンタルへルス・ケア)」の必要性です。


メンタルへルス・ケア(心と体の健康)

1. 子どもに対するメンタルへルス・ケア
2. 子育て仲間(保護者)に対するメンタルへルス・ケア
3. 保育者仲間に対するメンタルへルス・ケア
4. 地域社会に対するメンタルへルス・ケア


最後に、究極的に社会福祉法人童心会が目指しているものは、保育園を核とした「失われた新しい地域コミュニティ創り(新しい村づくり)」です。
村中が総出で田植えをしていた時代のように、村人たちがひとり残らず挙って(こぞって)参加しながら "助けあって生きる" を、子どもたちの心に伝えてあげることが、今地域に求められていると思っているからです。


保護者の皆さま、あなた方は「産みの親」、私たちは「育ての親」です。
でも、あなた方もこの童心会の保育園の村人として、自分の子どもにだけ愛情を振る舞うのではなく、この保育園で生活している「村人の子どもたち」に対して、一人ひとりが育ての親になってほしいと願っているのです。

 

(社福)童心会という村の子どもたちみんなを、大人たちみんなで育てましょう!!

 

今日から新しいヒューマンネットワーク(新しい村づくり)の始まりです。
皆さま、今年度もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 

平成 30 年 4 月吉日
社会福祉法人 童心会
理事長 中山 勲

H30_03 【出発の歌】~たびだちのうた~

人とひと とのぬくもりで

子どもが育つ 親が育つ 地域が育つ町

(社福)童心会

という合言葉があります。

 

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今 私たちの周囲から失われた地域社会が、どのような役割を果たしていたのかを知る。

私たちが、今ここ(保育園)で何をなすべきなのかを考え、子どもたちが身につけた宝物を、この「出発の歌」と共に振り返ってみたいと思いました。

 

18世紀のフランスで活躍した思想家 ジャン=ジャック・ルソーの「エミール」は、自由な社会を担いうる人間を育てるための「教育論・人間論」を展開しています。

「自分のために生き、みんなのために生きる」というテーマでした。

250年も前にルソーが提示したこの課題は(社福)童心会の教えそのものでした。

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ジャン=ジャック・ルソー

ひとりで、みんなと、人のために

ひとりで できる  ひとりで できた  ひとりで 生きる

みんなと できる  みんなと できた  みんなと 生きる

人のために できる  人のために できた  人のために 生きる

助け合って できる  助け合って できた  助け合って 生きる

 

改めて私は 保育所が今までどのような機能と役割を持つべきなのか、を考えてきました。

そして ひとりで、みんなと、人のために、助け合って生きるために、失われた地域社会に替わるものは何なのかを問い続けなければならないと思いました。

 

保育所から始める地域コミュニティ宣言

今 ここ(保育園)は 町の小さなコミュニティ

うるおいのある ところで

心とこころが ふれあうところ

また  心の昂ぶりが 育まれるところ

 

そして  共にくらす仲間たちが

助け育ちあう ところ

 

だから  ここは 私たちの家

ここに くらす 仲間たちは

私たちの 家族のひとり

 

正に これが 「子どもたち一人ひとりを 大人たちみんなで」 という、私たちの新しいヒューマン・ネットワークのテーマになりました。

私たちは毎年毎年  春夏秋冬のまつり、お誕生会、運動会、X'mas発表会などを通して「生みの親と一緒に 地域親を育てながら、より良い育ての親になろう!」という思いをこめて、「保育所という新しい村づくり」 に取り組んできました。

なぜならそこに 村人たちから与えられる、「人間としての生きる基盤」 「愛された育ちの保障(だきしめ言葉)」 があり、お友だち先生、お兄ちゃん・お姉ちゃん先生、そしてまたお家に帰れば 小さなお父さん、小さなお母さん にもなって、村人としての役割を子ども時代から学ぶことができると思ったからです。

即ち 愛された子どもたちは、母親や養育者(仲間・兄弟姉妹を含む)たちとの承認や  応答関係から生じる大切な宝物を身につけてきました。

それは自分に対する愛と 他人を愛することができる心でした。

そしてそこには「利他の心」も生まれてくるというのです。

改めて また 子どもたちの育つ を見つめてみると、これが(社福)童心会の目ざしてきた保育であり、「思いやり と 生きる力」 という保育目標にもなっているのです。

先日 (社福)童心会の新しい仲間 50余名が集まって  「新採用保育者仲間の応援会」が柏市内で行われました。 

冊子の表紙には次のように書かれていました。

 

ウェルビーイング (幸福な生活)

子どもたちの 笑顔の中にいる 私たち

保育所は今 “生きている喜び と 共に学びあう心”を育むところ」

目指そう

「笑顔名人・挨拶名人」                  

                        

平成 30年 3月 吉日

社会福祉法人 童心会

理事長  中山 勲