思いやりと生きる力

わたしを ぎゅっとして わたしを 見つめて わたしを 聞いて わたしを 呼んで

コロナ禍の中で見つけた”新たな 日常”( New Normal)

 京都市の北東方に比叡山という山があり、東の中腹に天台宗の総本山延暦寺があります。その天台宗の「一隅を照らす運動」の中に「無財の七施(むざいのしちせ)」があります。
 仏教には、人々が人間形成に努めて幸せや安らぎの境地に至る道「ありがとう」「おかげさま」の気持ちを行動で表す身近な実践として説かれている教えがたくさんあります。その第1 番目が布施です。
 布施の「布」は分け隔てなく、すべてにわたって広く、「施」は文字通りほどこすという意味です。


 私はこのコロナ禍の長い時間の中で改めて見直した”新たな日常”New Normal の中で
「(社福)童心会のSpirit (精神・魂)」を原点回帰するために再確認いたしました。
 

 そして私たちの日常生活においてお金がなくても、物が無くても、ましてや今のこの閉塞的なコロナ禍の中で、心苦しい暗いニュースを見聞きする中で、子どもたちの笑顔に負けない周囲の人々に喜びを与えていく教えが「無財の七施」だと思いました。

 

無財の七施

 

1.眼慈施 (やさしい眼差しで見守ること)

2.和顔施 (とびっきりの笑顔でおもてなし)

3.言辞施 (思いやる挨拶や感謝の言葉)

4.身施 (体で他人のために尽くすこと)

5.心施 (痛みや苦しみに寄り添う心)

6.床座施 (席や場所を譲ることなど)

7.房舎施 (来客に対しておもてなし)

 

 私たちは「ヒトの成り立ち」のはじまりをEvidence Based (科学的根拠に基づいて)として捉えてみた時、何か目に見えない大きな力が働いていることに畏怖の念を感じ、畏敬の想いを心に感じます。
 特に胎生期28 週には 視覚・聴覚・体制感覚 を身につけて生命を授けられる不思議を
私たちは持つべきなのではないかと思いました。

 

 また、肺呼吸を授けられて生命の誕生を迎えた時、五感を授けられている不思議にも、私たちは目を向けなければいけません。
 改めて言うまでもありませんが、五感 とは 視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚 をいいます。いつも何気なく目にしていた言葉ではありましたが”覚”という文字を広辞苑を開いて調べてみました。

 

○覚   ①感ずること。覚えること。
   ②〔 仏 〕 悟り、悟りの智慧。覚悟。
○悟り  ①理解すること。知ること。気づくこと。
   ②〔 仏 〕 まよいが解けて真理を会得すること。

 

 私はこれを読んでヒト(ホモ・サピエンス)が生得的に五感を授けられた意味を考えてみました。(社福)童心会には開園当初から「五感を刺激する 0 歳からの人間教育」という大命題があります。
 即ちヒトの学びは「見て倣い、観せて学び、聞いて考え、聞かせて習う、触れて知って、触って記憶する」から始まると考えてきました。

 

 だから五感の”覚”とはただ知ること、理解することだけではなく、学びを通して真理を会得すること、悟りの智慧(実人生を生き抜く力)を身につけることであると確信しています。
 そして私たち(社福)童心会の理念「ヒトを 創る」 は次のようになったのです。

 

(社福)童心会の訓〔 ヒトとして如何に生きるべきか 〕


1.生きる をつづける人(興 味)

2.学 び をつづける人(関 心) 

3.知 る をつづける人(好奇心) 

4 .やる気 をつづける人(意 欲)

5 .げん気 をつづける人(気 力)

6 .願 い をつづける人 (意 志)

 

 私の知る限りでは、1945 年からの戦後を振り返ってみた時、第一次ベビーブーム、高度経済成長期、第二次ベビーブーム、育児不安、 イライラ 感 、 荒 れた 中 ・小学校、体罰による子育て、いじめ、引きこもり、壊れる子どもたち、クレーマーなどの出現で保育所も学校も感情労働の職場と言われるようになってしまいました。


 ECEC(乳幼児期の教育と Care )と言われた時代は今、失われようとしているのです。だから私たち(社福)童心会が今考える人間教育(生涯学習・生涯教育) の考え方は次のようになりました。

 

〔Early Childhood Learning mind and Mental Healthcare 〕
~乳幼児期からの学ぶ心と 心と体の健康~

 

 改めて感情労働の職場としてではなく、Care mind を育てあいながらそれぞれが自分の人間性を高めあって、共に暮らす人々の心と体を和ませることのできる新たな日常(
New Normal )を創り続けたいと決意したのです。


 私たちが今求められている歩むべき道は法人だより12 月号にも書いた通りです。 いつの時代でも悟りの智慧(実人生を生き抜く力)は変わりません。もう一度読んでみて下さい。

 

 私は令和2 年( 2020 年)の最後の師走の月に私たち(社福)童心会の訓え「人間としてどう生きるか」という問いかけの中で村人(育ての親)の皆さまに私たちと同じような心得を是非育ててほしいと願い、祈りを込めて今これを書いています。

 

〔ヒトとして歩むべき道理 〕


1. 笑顔 (とびっきりの えがお) 

2. 挨拶 (心にとどく ごあいさつ)

3. 思いやり 苦しみに よりそう心)

4. 感謝 (心からの ありがとう)

5. 傾聴 (話しに 耳を傾けあう)

6. 受容 (心を 受けとめあう)

7. 共感 (ヒトと人とが 感じあう)

8. 共生 (助けあって 共に生きる)

 

  令和3 年 1 月 吉日
  社会福祉法人 童心会
  理事長 中山 勲

(社福)童心会の X'mas 生活発表会始まる

 令和2年(2020年度のX'mas生活発表会が12月1日(火)に柏しんとみ保育園のばら組さんから始まりました。
 このようなコロナ禍の中で、各園の先生方がそれぞれに工夫を凝らしながら、例年に比べて”ささやかな発表会”ではありますが、先生たちの「この1年間の子どもたちの育ちをパパ、ママ、そして私たちと共有しながら喜びあおう!」という考えの下に今年は始まりました。


 そして私のスピーチは次のようになりました。


 「今の新しい科学のエビデンスは、人間教育は胎生期から始まっており、28週期には視覚・聴覚・体制感覚が身についていて、生まれおちた時には 神さまから授けられた社会的微笑、見つめあい、仕草、声かけなどを介してママや他の養育者とのコミュニケーションを始めます」とお話しをしました。


 そしてさらに呼吸を身につけてこの世に五感と共に生命を授けられてからは「学び続けながら、ひとりで生きろ!みんなと生きろ!人のために生きろ!助けあって生きろ!」と神さまに言われ続けているのだそうです。


 1996年にユネスコから発表された”人の学びの姿勢 ドロールレポート ”には次のように書かれてありました。

~ドロールレポート~

Learning to know(知ることを学ぶ)
Learning to do(為すことを学ぶ)
Learning to together(共に生きる を学ぶ)
Learning to be(ヒトとして生きる を学ぶ)

 

 私たち(社福)童心会の大黒柱となる教えの中に

「ヒトとして歩むべき道理」

が基礎となっています。
 

 だから私たちの訓えは常に「人間としてどう生きるか」を問い続けているのです。


 しかし私たちは今日まで保育園の歩むべき道を間違ってきたように思いました。
確かに日本の保育指針の中には、保育とは「養護と教育」であり、養護とは「子どもの生命の保持と情緒の安定、そして教育である」と唱っています。

 また外国の北欧・中欧でも「保育とは養育と教育とケアである」とさらに声高く唱っています。
 だから日本の保育という言葉が一番適切であると、次のような言葉におきかえています。


保育 = Child day care ・ Day care


 要するに子どもたちを、一日養護するところだと言っているのです。
 私は柏しんとみ保育園の、もも組さんのX'mas 生活発表会で次のような爆弾発言をしました。


 「保育所は今、子どもたちを保育士や保育者仲間たちが親からお預かりして一日養護する所、お世話する所ではない。保育所は今、Social allomothering (社会的共同養育)する所なのだから、ここに住む村人はみんなで、子どもたちみんなを育み育てる社会にしなければならないのではないか」と言ったのです。


 (社福)童心会の保育園が、町であり、村であり、家であり、家族であり続けるならば生活者全員が責任を持って、人間教育(生涯学習・生涯教育) に取り組むべき社会の実現に力を入れるべきなのでしょう。


 改めて私は令和2年( 2020 年)の最後の師走の月に私たち(社福)童心会の訓え「人間としてどう生きるか」という問いかけの中で村人(育ての親)の皆さまに私たちと同じような心得を是非育ててほしいと願い、祈りをこめて今これを書いています。

〔ヒトとして歩むべき道理 〕


1.笑顔 (とびっきりの えがお
2.挨拶 (心にとどく ごあいさつ)
3.思いやり (ふれあいとよりそう心
4.感謝 (心からの ありがとう)
5.傾聴 (話しに耳を傾けあう
6.受容 (心を受けとめあう
7.共感 (ヒトと人とが 共感しあう)
8.共生 (助けあって 共に生きる) 

 

     令和2年12 月 吉日
     社会福祉法人 童心会
     理事長 中山 勲

 

童心会の運動会追想記 ~運動会を通して学んだこと

 10月23日発行された読売新聞の記事の中で、「全国の小中高と特別支援学校で2019 年度に認知されていたいじめが前年度から7 万件近く増えて 61 万 2496 件に上り、過去最高(小学校は 5 年で4倍だったことが22日、文部科学省の問題行動・不登校調査でわかった。」と書いてありました。


 私たち(社福)童心会の保育者仲間たちは、このようなこともあろうかと保育園での毎日の生活や、毎年行われる行事などを通して「ヒトとしてどう生きるべきか」を学び続けてきました。
 子どもたちと私たち保育者仲間たちは、ばら組さん(0歳)の時代からさくら組さん、そして生命が終わる時まで忘れてはならない

「生きる目標・道しるべ」

を仲間たちと育みながら、保護者の皆さんや子育て仲間、地域社会の皆さんに発信し続けてきたのです。


それは

「思いやり(慈悲)と生きる力(智慧)」

です。


私たちは子どもたちと一緒にばら組さんの時代から、

「五感を刺激する0 歳からの人間教育」

を目指して生きる目標・道しるべを求め続けてきました。

 保護者の皆さま、私たちの発信し続けてきた”シグナル”を受け止めていただけたでしょうか?私たちはこのようなコロナ禍の時代の中でも変則的な運動会になりましたが、今年も無事に終わりました。その裏には各学校の校庭や体育館の提供、地域の人たちの尽力、保護会やファミリー会の役員さん、柏さかさい保育園の親父の会などの多大なるご協力があった賜と心から感謝しております。
 そのお陰様に報いようと私たちは子どもたちと必死に練習を繰り返しながら”ヒト創り”に励んできました。
 私たち童心会の生活や行事を通しての目標は次のようになっています。

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 改めて今、このコロナ禍の中での今年の運動会を追想してみますと、本当に子どもたちにすまない気持ちになります。
 しかし「サピエンス全史」を書いたイスラエル歴史学者エヴァル・ノア・ハラリ氏は1349年から始まったペスト、発疹チフス、インフルエンザ、エイズエボラ出血熱など世界のパンデミックの歴史をふり返ってみてホモ・サピエンス(賢い人)は30 万年もの間、環境に対応して生きぬいてきたと言うのです。
 そんな中で「今後最も重要な協力の形態は情報の共有だ」とあるインタビューに答えていました。また現マイクロソフト社長のブラッド・スミス氏は「リモートワーク一色になっても人々が集い、ともに過ごす場も必要だ。何かを考えたり、働いたりする機会は欠かせない。」そしてまた『 人生は「生産性」をあげることだけがすべてではない。「創造性」や「仲間づくり」も大切である。この三つの要素のバランスの取れた未来が必要だ。人々のつながりを促進し、創造性や仲間づくりを支援するテクノロジーが求められるはずだ。だが、テクノロジーにも限界があることも忘れてはならない。』 とも言っていました。


 私は今年の(社福)童心会の親子運動会を通して皆さまに必死になって伝えたメッセージがありました。
「このようなコロナ禍の時代の中で、働き方や人間関係、生活に対する価値観やライフスタイルまで今までの時代によりさらなる多様性が求められる社会になりますが、これからの時代の宝物は子どもであり、仲間たちである」と声高らかに伝えました。
「だから、ご近所の人間関係も失われてしまった今、これからは童心会の保育園が町となり、村となり家となって、私たち一人ひとりが家族のようなつながりを広めていく
べきだ」ともいいました。
それは生命を授けられた0 歳の時から、生きる目標・道しるべとして
「思いやりと生きる力」
を身につけてきた私たちの尊い財産だったからなのです。


いみじくもひまわり組さんのあるお子さんが、お泊まり保育のミーティングで

「やさしくするってどういうこと?」

と先生が聞いたら、すかさず

「困っている人を助けてあげること」

と言ったそうです。

どうか皆さま、これからもずっとずっと(社福)童心会の保育園が子どもたちや保護者の皆さま、保護者仲間たちの心のよりどころになることを祈っています。
今年もまた、ご協力をいただき本当にありがとうございました。

令和2年11 月 吉日

社会福祉法人 童心会

理事長 中山 勲